ドライブレコーダー革命 事故の真実を突きとめ、運転者の能力まで向上させる

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   車に搭載するドライブレコーダーが売れに売れている。あおり行為や危険運転の対抗策として人気が出て、販売台数は200万台を突破し、3か月から4か月待ちという。映像記録から交通事故の思わぬ要因も明らかになり、「ドラレコ革命」と呼ばれるほどだ。

   タレントの川崎希さんは2017年3月、車内外360度を映せるドライブレコーダーを買った。20年前の小学生時代に車にひかれ、気づいたら地面にいた記憶から「被害者の立場で何が起きたかを見てみたい」と思ったのが購入理由だという。

   ドライブレコーダーが決定的な機能を発揮した例がある。おととし(2016年)に福岡県の交差点でミキサー車と軽乗用車がぶつかり、軽乗用車の男性が死亡した。ミキサー車の60代男性運転手は「信号は青だった」と軽乗用車側の責任を主張したが、別の車のドライブレコーダーが事故の瞬間をとらえていた。ミキサー車側の信号は赤だった。運転手は動かぬ証拠を見せられてウソを認め、危険運転致死罪で懲役7年の判決を受けた。

   亡くなった軽乗用車ドライバーの妻は「ドライブレコーダーがなかったらと思うと恐ろしい」という。川崎さんは「ご家族の人も浮かばれた気がしたはずです。他の人の事故にもドライブレコーダーは役立ちます」と話す。

   交通事故5000件を鑑識してきた日本交通事故鑑識研究所代表の大慈彌雅弘さんは「ドライブレコーダーは事実をとらえる」とうなずく。これまでの鑑識作業はタイヤ痕などの遺留物から事実を追及したが、どうしても限界があった。とくに、信号は時間の流れで水掛け論に陥りやすい。ドライブレコーダーの記録はウソや逃げ得を許さない。

   大慈彌さんは日本で初めてドライブレコーダーを開発した人でもある。遺族の声を聞いて「映像を記録するしかないと手作りしました」という。

交通事故は安全な速度、見通しの良い道路で起きる

   今のドライブレコーダーは事故の瞬間だけでなく、車の速度や急ブレーキ、急ハンドル、発進状態、GPS情報も記録できる。事故やヒヤリハット10万件のデータからは、時速30キロ以下の低速運転が57%、見通しの良い道路で起きるケースが52%を占めるという予想外の分析結果もはじき出された。

   東京農工大学の研究室は、60万件の映像からドライバーの目の動きを解析した。目で左右を確かめながら、正面の歩行者と接触してしまう事故がドライブレコーダーの記録映像から浮かび出た。大北由紀子・主任研究員は「視野に入っているのに認識していない現象があります」という。

   東京大学大学院の小竹元基・准教授は「思い込み発進」に注意を促す。左右を確認してから、どちらかを見たままアクセルを踏んでしまう。安全確認が終わらないうちに出る、慣れたドライバーだからこその心理だ。「大丈夫だろうと思い込んでの発進が習慣になっています」と小竹准教授は指摘する。

   この見ているようで実は見ていない状態を、大慈彌さんは「心のわき見運転」「脳内わき見」とよぶ。川崎さんは「私も子供が生まれて、いつか一人で横断歩道を渡らせるのが怖くなりました。歩行者も気をつけなければと思います」

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