動物愛護団体やボランティアが犬や猫の保護飼育で行き詰まるケースが相次いでいる。6年前に動物愛護法が改正され、自治体が飼わなくなった犬や猫の引き取りを拒否できるようになり、保健所などで殺処分される犬や猫が年々減少した。それ自体は望ましいことなのだが、引き取り手がいない犬や猫が今度は愛護団体に大量に持ち込まれるようになってしまったのだ。
関西のある動物愛護団体が運営に行き詰まり、犬や猫合わせて142匹を飼育できれなくなる事態が起きた。殺処分ゼロを掲げる地元自治体だけでなく、他の自治体からも犬や猫を引き取り続けたことから、人手が回らなくなった。動物愛護団体の「Wan life」の島田香代表は、「(愛護団体が)断れないのを分かっていて(行政は)お願いしてくる」と憤る。
「命を預かっているので止めるに止められない」
動物愛護団体「ピースワンコ・ジャパン」は広島県の山奥の4ヘクタール超の敷地で、1900匹の犬を保護している。広島県はかつて殺処分数で全国ワースト1位だった。心痛めた大西純子代表が2年前に、殺処分対象の犬をすべて引き取ると県に申し出たことが始まりだった。
年間の保護頭数700匹と見込んでいたが、1年目に倍近い1391匹が持ち込まれた。一般家庭への譲渡を増やす努力をしても焼け石に水。従業員やボランティア合わせて40人で日々に餌やりや掃除を行っているが、慢性的な人手不足に陥っている。
運営費はほぼ全額が全国からの善意の寄付で賄われており、とりわけ大きいのがふるさと納税からの寄付である。地元の町と連携してふるさと納税の使い道に犬の保護活動を加えてもらった。しかし、犬用シェルターを建設すると1棟で5000万円もかかる。冷暖房など光熱費や餌代で経費も膨らむばかりで赤字が続いている。
それでも大西代表は「私たちに託されている思いは、何が何でも継続していかないといけないんです。やめれば皆さんからの支援も止まります。支援が止まれば犬たちがどうなるか、目に見えています」と話す。
法律・行政、ペット業者、飼い主の無責任
法改正を担当した環境省の則久雅司・動物愛護室長は「殺処分ゼロということで、直ちに(殺処分を)止めなければいけない世論を作ってしまったところもある」とちょっぴり自戒するが、現実に生ずるジレンマまでは予測できなかったのか。
動物福祉が専門で法改正の検討委員を務めたアニマル・リテラシー総研の山崎恵子代表理事は「自治体の殺処分ゼロを見ると、ある意味、政治的スローガンになってしまっているところがある」と指摘する。愛護団体に押しつけて殺処分ゼロを自画自賛している自治体の無責任さ。飼主側に「終生飼養」を言うだけで、これといった対策を取らない法改正。さらに、命を預かるという覚悟のない飼い主、犬や猫をもののように売り買いする業者など、ペットブームそのものに大きな問題がありそうだ。
*NHKクローズアップ現代+(2018年1月24日放送「どう減らす?犬・猫の殺処分」)