「30年後の自分の悲惨を想像せよ!世の中はこれ以上は良くならない」知の巨人たちの慧眼
サンデー毎日に掲載された「知の巨人」たちの安倍首相の経済政策や日本の暗い未来についての考えを紹介しよう。まずは大長老・伊東光晴の「本気の直言」。「中曽根康弘政権がその典型だったように、過去の財産を食い潰してきた。国鉄、電電を民営化してその株を売却するなど、明治以来の財産を食い潰し、とりあえず今の生活を維持する、ということをしてきた」
「原子力発電と同じだ。原発は放射性廃棄物という処理不能のゴミを出しているが、何とかなるだろうと言って発電を続けている。このとりあえず主義は、日本の庶民の心に深く根差しており、それに対抗する明治以来の西洋合理主義と、さまざまなところでぶつかり合うが、ほとんどがとりあえず主義の勝ちとなっている。国債発行、原発・・・。皆、根っこは同じだ」
次は内田樹。橋本治が書いた「九十八歳になった私」を取り上げ、こう論じている。「橋本はここでとても大切なことを書いていると私は思う。それは『現在の自分の立場を安泰にしておいて』なされる未来についての想像は『フェアじゃない』。だから、同じように『現在の自分の立場を安泰にしておいて』なされる過去の回想も『フェアじゃない』のだと思う。
過去30年を振り返るとしたら、『こんな日本に誰がした』というような言葉づかいは自制すべきだろう。他ならぬ私たちが『こんな日本』にしたのである。
同じように30年後の日本について語るときも、それが絶望的な見通しであればあるほど、その社会でリアルに苦しんでいる老残の自分をありありと想像した上で、『そうなることがわかっていながら、止めることができなかった』私自身を責めるべきなのだ」
ここでも、とりあえず、まあいいか、と考える日本教が未来を食い潰すといっている。伊東や内田がいっているのは、いま生きている日本人は各々が切実に自分の30年後を思い描くべきだということである。そうすれば、少子高齢化は止められないが、財政破たんはかろうじて回避でき、弱者救済政策もかろうじて継続できるかもしれない。そのために今すぐ何をするかが問われている。