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ソープ焼死者の実名なぜ出す?

   ところで、私がハワイにいる間に大宮のソープランドで大火事があったそうだ。

   だいぶ昔になるが、まだ元気だった芸能レポーターの梨元勝と大宮のトルコ風呂(当時はそういっていた)で遊んだことがある。

   彼はたしか、おじいちゃんと大宮で暮らしていたと記憶している。その頃は、トルコでひとっ風呂浴びて、それから呑むということがよくあった。その頃の大宮はまだ田舎だった。

   週刊現代によると12月14日、さいたま市大宮区のソープランド「KAWAII大宮」が全焼し、12人が死傷した。そのうち、従業員の女性2人と男性客2人が、一酸化炭素中毒で死亡した。

   大宮駅東口から北へ300メートルほど進むと、突然現れるソープ街は、「大宮北銀座」、通称キタギンと呼ばれるエリアだという。戦前の赤線時代から営業を続け、20軒近いソープランドが軒をつらねる。ここだったかな梨元と遊んだのは?

   障がい者収容施設で多くの障がい者が殺されても名前を公表しなかった警察が、今度は死亡した人の実名を発表したという。

   NHKや産経新聞は3人の実名を報道した。それによって死亡したA(42歳)のところへ取材陣が押しかけたのだ。

   週刊現代が父親にAの名前が公表されたことをどう思いますかと聞くと、「どこが名前を出した?」と怒ったという。それはそうだろう。

   警察がメディアに公表したのですというと、「内緒にしとけって言ったんだけど......。いずれにしても取材は受けない」と断った。

   死んだ4人は、黒焦げで、身元がわかるのは時間がかかるだろうといわれていたが、3人は意外に早く判明したようだ。

   私は原則、実名で発表するべきだと考えている。しかし、警察は実名で発表しても、このケースでは、メディアは何らかの配慮をする必要があったのではなかったか。

   Aは、好青年で礼儀正しい人だったと近隣の住民が現代に答えている。

   Aは命を落としてしまった被害者で、何の落ち度もないのに、ソープランドに行っていたことが、家族どころか全国に知られてしまったのだ。

   さらにソープで働いていたことが満天下に知られてしまった2人の女性は、セカンドレイプのようなものではないか。「KAWAII」の関係者がこう憤慨する。

   「実名を出した警察やテレビ局、新聞社に憤りがあります。女の子の家族が何を思うのか。借金を抱えて短期で働く子もいるんです。会社勤めもいれば、主婦だっている。家族には働いていることを伏せているのは当然のことでしょう」

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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