〈GIFTED〉
天才それとも普通の人 どちらが子どもの幸せか?

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(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
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   神様から授かった特別な才能を、預かった者の責任とは。最高の環境とは、人生の幸せとは。解釈によって大きく揺れるそれらは、不確かで、後戻りができなくて、誰も正解などわからない。その大きな問いにひとつの答えを示すのが、この作品だ。自死した天才数学者が遺した、麒麟児の少女をめぐる、本当の幸せの物語。紹介されるのは、極端な例かもしれないが、人の親なら誰しも共感するところがある。

   将来を嘱望された数学者・ダイアンが、乳飲み子を遺して自死して6年。遺された娘のメアリーは、ダイアンの遺志により、フロリダでボート修理に従事する弟・フランクのもとで育てられていた。片目の猫のフレッドと二人の生活は、穏やかで楽しいことばかり。

   だが、メアリーが就学年齢を迎えたことで、二人の生活は大きく揺るぎ出す。母譲りの類稀なる数学の才能が瞬く間に教師の知るところとなり、「gifted」すなわち、アカデミックな才能に長けた生徒のための高等教育校への転入話が持ち上がるのだ。

   フランクはそれを頑なに拒み、ダイアンが娘に与えたかった「普通の教育」にこだわるが、絶縁したはずの実母・イブリンが現れ、飛び級教育を執拗に求め始める。話は親権に及び、フランクは法廷で、実母を相手に、姪をかけた争いに向き合うことになる。

   猛烈な教育ママというだけでなく、自らも研究者として第一線を覗いたこともあるイブリン。姉ほどの傑出した才能こそなかったが、ボストン大学で教鞭をとっていたフランク。麒麟児の処遇をめぐり、正反対の立場をとる二人だが、天才の価値がわかる秀才という点では、バックボーンを共有している。

   だからこそ、どちらの思いもまた強固だ。イブリンは、才能を限界まで伸ばし、人の世の発展に貢献すること、歴史に名を残すプライズを得ることにこだわる。フランクは、友達を作ったり恋をしたり、人との交わりの中で得られる幸せを与えてやりたい。

   数学に向き合っている時の幸せそうな顔も、近所のおばさんとヒットショーのモノマネをして遊んでいる時の「最高!」という笑顔も、どちらも本当のメアリーだ。だからこそ、判事の心も千々に悩む。

   それでもスクリーン越しの我々は、圧倒的な幸せが、今の2人にあることを知っている。

   いつでも自分を見放さないと信じているからこそ軽口や生意気を連発するメアリー、愛おしそうな視線を送るフランク。夕日に照らされながらじゃれあう2人と1匹の帰路。選び取った答えには、涙が滲むこと請け合いだ。

   そして、ここまでストーリーに引き込まれるのは、フランクを演じるクリス・エヴァンスの好演あってこそ。筋骨隆々で体型はしっかり肉体労働者風、インテリジェンスを「あえて隠している」のは、その方が幸せなことも多いと知っているから。だからこそ、荒っぽくない言葉選びや、どこか陰がある雰囲気に説得力がある。

   さらに相乗効果で相手を引き立てるのが、マッケナ・グレイスが演じるメアリーの多面性だ。数学の問題を見つめる時の全能にも似た視線と、同世代の子供の中で無邪気に笑うときの落差の大きさ、そして「どちらにも嘘がない」と思わせる演技の自然さは圧巻。

   この手に滑り込んで来たgiftを、どう生かすべきか。どう生きるべきか。丁寧に描かれる葛藤と選択に、勇気付けられる一作です。

ばんぶぅ

おススメ度 ☆☆☆☆

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