日馬富士暴行騒動だが、週刊誌の矛先は白鵬に向かっている。日馬富士も悪いが白鵬はもっと悪いと、週刊文春と週刊新潮が大特集。
週刊新潮から見てみよう。初顔合わせで白鵬を破った貴ノ岩は、「白鵬が優勝回数など複数の記録を塗り替えて称賛されてきたことにも疑問を呈していた」という。
そこで白鵬は目障りな奴に説教する機会をうかがっていたそうだ。また、騒動当夜の凶器は「ビール瓶」ではないと場所中にもかかわらず記者たちに話したが、「本当はビール瓶で殴ったのではないか」という疑惑はくすぶっていると、思わせぶりだが、これは鳥取県警が「ビール瓶では殴っていない」と結論付けているそうだから「疑惑」のまま。
注目は、相撲協会と記者たちの「ぬるま湯"無気力相撲"」に言及していることである。
今年の10月7日、湯河原の高級ホテルに八角理事長をはじめ相撲関係者が集まっていた。
そこにはテレビ、新聞などの相撲記者たちも同席していた。1泊2日の両者の親睦会で、参加費は1万5000円。だが、一流ホテルで山海の珍味と酒、二次会のカラオケではコンパニオンも呼んだというから、この金額では収まらないだろう。
また12月4日には、国技館の本土俵で、記者クラブの記者がまわしを付けて相撲を取る「お遊び大会」も予定されていたという。
さすがにこの時期はまずいと中止になったそうだが、ジャーナリズムに一番大事な、取材相手との距離感が、この記者たちにはないという一例である。
あとはスポーツ評論家といわれる玉木正之の蘊蓄が面白い。貴乃花親方が改革というが、「相撲の世界は改革なんて要らない。伝統を守ることが必要です。稽古の稽は考えるという意味で、稽古とは古きを考えるという意味」だそうだ。
蒸し返される「八百長事件」
週刊文春は古きを訪ねて新しきを知る大特集。まずは2011年の「八百長事件」から始める。
この問題で廃業した元力士が、この事件で処分されたのはほとんど十両ばかりで、それも27、8歳で、この先がない連中ばかりだったと話す。
週刊文春は、八百長関与が認定されて引退勧告を受けたモンゴル出身力士は、処分者の4分の1に当たる6人もいたとして、現在もモンゴル力士たちの間では八百長が行われているのではないかと匂わせる。
また週刊新潮と同じように、貴ノ岩を殴ったのは日馬富士だが、白鵬も共犯者だと、貴乃花が見ているとしている。
その後の白鵬の「貴乃花が巡業部長なら行きたくない」発言が、貴乃花と白鵬との対立を強烈に印象付けたと続ける。
どうしても白鵬の40回の優勝にケチを付けたい週刊文春は、週刊現代の過去の記事まで引っ張り出す。朝青龍と白鵬の八百長を宮城野親方(当時元十両・金親)が、愛人に告白し、八百長にかかった額はと聞かれ「300万!」といった会話のテープがあると、週刊現代が報じた。
宮城野は酔っていてもうろうとして話したので、デタラメだと釈明している。
この一連の八百長追及記事は、相撲協会側から損害賠償請求がなされ、週刊現代側は敗訴するのだが、週刊文春は、この部分については協会側から提訴されていないではないか、信ぴょう性はあるとしている。
また、週刊文春が以前報じた白鵬の「愛人」との2ショットや、彼を取り巻く怪しい「タニマチ」を持ち出して、白鵬の横綱としての品格に疑義有りと迫る。緊急の読者アンケート「ほんとうに悪いのは誰か」をとり、1位に日馬富士ではなく白鵬がなったと、白鵬悪人説を読者に押し付ける。
日馬富士があっさり辞めてしまったため、貴乃花の相手役を見つけなくては誌面が持たない。そこで白鵬を攻撃目標にして、モンゴル力士に八百長の疑いありとするのは週刊誌の常道である。
私も相撲には八百長があると思っている。だが、八百長だけで40回も優勝することはできはしない。
また、貴乃花のやり方にも問題がある。FLASHが掲載した貴ノ岩の近影を見る限り、重傷で寝たきりとは思えない。白鵬をやり玉に挙げるのなら、貴乃花と貴ノ岩の処し方も追及するべきではないか。