九州場所は土俵の上も外も荒れに荒れている。日馬富士の暴行事件に始まった大騒動だが、稀勢の里が予想通り9日目に5敗目を喫し、休場してしまった。
一人横綱の白鵬は10日目まで万全の相撲を取っていた。だが、11日目の嘉風戦に敗れた。白鵬は立ち合い不成立を主張し、嘉風が勝ち名乗りを受けても土俵に上がらず、62秒間土俵下にいて、審判部を睨み続けるという大横綱らしからぬ振る舞いをしたため、批判が殺到した。
もはや国技の体をなしていない相撲界だが、日馬富士事件の解明も遅々として進んでいない。その原因は被害者である貴ノ岩が雲隠れし、師匠である貴乃花親方が、相撲協会の協力要請を頑なに拒み、沈黙しているからである。
だが、さすが週刊文春というべきだろう。今週号で貴乃花側のいい分を掲載している。記事中で貴乃花の肉声をよく知る極めて近い関係者が、その胸中をこう代弁したとあるが、私が推測するに、これは貴乃花本人かまたは彼と親しい相撲担当記者からのリークではないだろうか。
「この事件は、単なる力士同士の暴力事件ではありません。貴乃花親方が、なぜ被害届を出すような行動をとったのか。その怒りの原点は、件の会合の経緯にあります」
貴ノ岩は、母校である鳥取城北高校の会合に出ていると思っていたのに、その実態はモンゴル三横綱の揃う、事実上のモンゴル会だったことを貴乃花が知るのは事件後だが、「そこで何が起きたかを把握した親方は『これは隠蔽されてはならない』と、被害届の提出に踏み切ったのです」(関係者)
事件が起こった二次会は、モンゴルの上位陣たちが貴ノ岩を「クンロク(制裁)」を入れる場として仕組んだのではないか、貴乃花はそう疑っていると別の関係者が語っている。
これを裏付けるのは、日馬富士が鳥取県警の事情聴取でこういっているからだ。
「九月下旬頃、都内で貴ノ岩が先輩のモンゴル出身の元力士らと飲んでいた際に、『俺は白鵬に勝った』『あなたたちの時代は終わった』など失礼な言動があったと聞いた」
そこで白鵬が、日馬富士、鶴竜に声をかけ、二次会に貴ノ岩を誘ったというのである。こうなると、白鵬が貴ノ岩の言動に腹を立てて、二横綱を入れて3人で「焼き」を入れようと画策した張本人だということになる。
その証拠に、二次会の席で白鵬が貴ノ岩に「そういうことをいったのか」と切り出したといわれている。
だが、その最中に貴ノ岩がスマホをいじりだした。
「その態度に腹を立てた日馬富士が『大横綱が話している時に何をしているんだ!』と
日馬富士の口から出た「最悪の言葉」
この修羅場を、週刊新潮はこう伝えている。
「日馬富士は"何シカトしてるんだ"とモンゴル語で怒り、まずカラオケのマイクを貴ノ岩に投げつけました。ドスのきいた声で"オーイ!"と言いながら、さらに氷やマドラー、カラオケのリモコンを"オーイ!"と言いながらすごい勢いで投げつけたのです。
そして日馬富士の口から相手を侮辱する「最悪の言葉」が出たという。
「彼は何度も"ビスタ!"と言って貴ノ岩を罵った。モンゴル語で女性器のことで、"女のアソコでも舐めとけクソ野郎!"といった意味です。そのうちに日馬富士は身を乗り出して、貴ノ岩のおでこを拳で力一杯何度も殴り始めた。これは相撲界で"クラワシ"と呼ばれる制裁方法です」(モンゴル力士に詳しい関係者)
だが、当初はすみませんとやられるに任せていた貴ノ岩も耐え切れずにモンゴル語でこういったという。
「こんなことやってる場合じゃないですよ。だからモンゴル人力士はダメだって言われる。こんな下らないことはオレたちの時代で止めますから」
日馬富士の怒りにさらに火が付き、焼酎「魔王」の瓶を掴んで殴りかかろうとしたのを白鵬が制止し、外に連れ出したそうだ。
週刊文春、週刊新潮ともに、戻ってきた日馬富士に貴ノ岩が謝り、日馬富士も、オレもやり過ぎだな、悪かったと謝って、皆で乾杯し直して、再び和気あいあいと飲み始めたと報じている。
週刊文春によると、事件後貴ノ岩は鳥取城北の関係者に連れられて治療に行き、頭部の傷口を医療用ホチキスで塞ぐ治療を受けたそうだ。
しかし、貴ノ岩を問い詰め、事件の全容を知った貴乃花親方は、傷は軽度という診断書を添えて、鳥取県警に被害届を出した。 この暴行事件は、加害者の関係者だらけの中で起きたため、彼らが口裏を合わせるのを懸念したため、彼らが本当のことをいわざるを得ない状況を強制的につくることを目的としたというのだ。
貴乃花親方と八角理事長との対立
貴乃花は以前から、なれ合ってつるんでいるモンゴル力士たちを苦々しく思っていたから、相撲人気が盛り上がっている今こそ、角界を浄化するために徹底的に戦うといっているそうだ。
貴乃花の刃は、相撲協会を私物化していると彼が考えている、現在の八角理事長にも向いている。
だが、世論に押され場所中にも関わらず、真相解明に動き出した危機管理委員会の事情聴取の依頼にも、すげなく「お断りします」と拒んだ貴乃花に、多くのメディアは批判的だ。
「協会の発展に努める理事として、貴乃花親方には協会に協力する義務がある。ファンが望んでいるのは早期解決と情報の開示。足を引っ張る行為は看過できない」(スポーツ報知・相撲担当キャップ網野大一郎)
週刊新潮で、相撲評論家の中澤潔もこう指摘する。
「協会の構成員、しかも巡業部長という重要なポストにいる人間が、協会に事情を聞かれても『分からない』と、とぼけてみせるなんて、貴乃花親方が騒動を大きくしようと意図していたとしか考えられません」
酒癖が悪いと書かれている日馬富士だが、週刊新潮は日馬富士の行きつけの銀座のクラブや、博多の中洲の店での飲み方を取材し、日馬富士は荒れた姿を見せたことがないと報じている。
しかし、たまに怒ることはあったという。
「後輩力士の態度や言葉遣いが悪い時です。放置していたら横綱として示しがつかないと思ったのでしょう」(行きつけの店の関係者)
日馬富士は法政大学に通い、自ら絵筆を取り、富士山をモチーフにした油絵を描くことで有名だ。相撲取りの中ではかなりのインテリといえるかもしれない。
その日馬富士が『新潮45』12月号に手記を寄せている。そこにこんな言葉がある。
「稽古は嘘をつきません。神様の導きと親からもらった丈夫な体だけでは、相撲に勝つことはできないんです。稽古をした者しか勝てないんですよ。(中略)一日中相撲のことを考えているのが横綱。力士全員にそれを求めるのは難しいでしょうが、『強くなりたい』と思うなら、若手力士にはそれぐらいの気持ちで相撲に取り組んでほしいと思うのです」
2020年の東京オリンピックまで現役を続けたいともいっているのだが、どうなるか。
孤立する貴乃花と貴ノ岩対モンゴル力士+相撲協会の"乱闘"は、まだ長引きそうである。
レコード大賞「ドン」への告発
乱闘といえば、年末のレコード大賞を巡って、週刊文春で、昨年までレコ大の最高責任者である制定委員長を4年間務めていた作曲家の叶弦大(81)が、芸能界のドンといわれる周防郁雄を告発している。
これには伏線がある。昨年(2016年)、週刊文春は、11月3日号で、「三代目JSBはレコード大賞を一億円で買った」というスクープを放った。
三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEが大賞に選ばれたが、その裏では、所属事務所からバーニングプロダクションに1億円が払われていたと、請求書まで開示したのだ。
それから1年が過ぎ、今年もレコ大の季節だが、早くも誰それが受賞するという噂が出ているのである。叶はこういう。
「今年も日本レコード大賞(レコ大)の審査が大詰めを迎えています。
現在、メディアでは大賞や新人賞などの"確定"情報が飛び交っています。十二月三十日に、委員の投票で決定されるはずの賞が、なぜ現段階で確定などと報じられるのか? それは、投票日の前に周防さんが票を取りまとめているからです。
彼の "鶴の一声"で大賞が決められ、それが外部に漏れ伝わるのでしょう。
栄えある日本レコード大賞がこんな状態でいいのか。何より審査は公正中立であるべきだし、全国の音楽ファンの皆さまが納得し、喜べるものであるべきです。
しかし、現場はその対極にある。このままではレコ大は死んでしまう。本来の姿に戻すために、現状を糾弾するほかはないーー。そう決意し、取材にお答えすることにしました」
叶は、周防のやりたい放題を許しているのは、メディアの人間たちだという。
「審査員の多くを占めるのはテレビ局、一般紙、スポーツ紙の代表ですが、周防さんは彼らマスコミに影響力を及ぼすことでレコ大をコントロールしてきました。
周防さんの影響下にある芸能事務所、そこに所属するタレントは膨大な数です。もともとマスコミ各社には"B担"と呼ばれるバーニング担当者がいて、日ごろから親密に付き合っている。歌手のインタビューやネタを提供してくれる周防さんに頼まれれば断れない立場の人間が、審査員を務めているのです」
もうだいぶ前から、レコ大は周防郁雄の私的なお祭りに成り下がっているのだ。叶の告発は遅きに失したというしかないが、それを見てみないフリをしてきたTBSなどの罪も大きいと思う。
週刊文春と周防とのやりとり。LDHから支払われた1億円の問題について聞きたい。
周防「答えるわけにはいかないよ」
周防社長らが結託して票を集めているそうだが。
周防「そんなことはありえない」
「権力者の手によって"つくられた受賞曲"ばかりが跋扈し、ファンの皆様が一番愛した曲がいちばん評価される、という形になっていない。本来、日本レコード大賞こそがその役割を果たさねばならないはずです」(叶)
レコ大も紅白歌合戦も役割は終えたと思う。消えたほうがいいのではないか。
東京都内でも平均寿命4歳の差
週刊現代が、「東京23区『健康格差』地帯を歩く」という特集を組んでいる。ところで「健康格差」というのは、東京大学大学院医学系研究科・公共健康医学専攻の近藤直己准教授によれば、住んでいる場所、所得、学歴、働き方、世帯構成など社会的な違いによる健康状態の差のことだそうである。
社会的に不利な立場の人たちのほうが、不健康な傾向にあるそうだが、そうであろう。東京23区ごとの平均寿命を見るとその傾向が如実に表れているという。
男性の平均寿命トップは杉並区の81.9歳で、ワーストは荒川区の77.8歳。
東京23区平均寿命マップを見てみると、「西高東低」なっているのがわかる。杉並区、世田谷区、目黒区など西側は平均寿命が高く、荒川区、台東区、足立区など東側の区は低くなっているのだ。
23区のがんの死亡率(男性)を見るとワーストワンは台東区で、次が北区、墨田区、荒川区、葛飾区となっている。
「台東区のがんの割合で特に多いのは肺がんだ。『平成24年広報たいとう』によると、台東区の喫煙率は男性が43.4%と、東京都の平均31%を大きく超えている。喫煙もがんに大きく影響する。(中略)
実際、平均寿命が短い地域は、野菜の摂取量も少ない。足立区の一日あたりの野菜摂取量220グラムは、東京の平均299グラムと比べても少ない。日本一寿命が長い長野県は379グラムなので、その差は歴然だ」(現代)
私が住んでいる中野区は平均年収が387万円で15位、平均寿命マップでは11位で、7 9.6歳と真ん中あたりか。
全国で男性の平均寿命を見ると、最も長生きなのが長野県で、80.88歳。秋田県は78.22歳で平均寿命こそ青森県の77.28歳より上のブービーだが、がん死亡率、脳血管疾患による死亡率がともに全国ワースト1の「短命県」だ。
東京23区では、平均寿命が低い区は平均年収も低いという相関関係が見て取れたが、その傾向は都道府県別の平均寿命にも当てはまるという。
「長野県は年収では21位だが、15年に県の健康長寿プロジェクト研究チームがまとめた長寿1位の要因分析によると、他県に比べて就業率が高く(男性は全国5位)、高齢者就業率に至っては全国1位だった。つまり、多くの人が安定した収入を得ていることがわかる」(同)
健康格差を放置すれば、医療費や介護費の増大を招き、日本全体の国家財政をさらに圧迫する。その結果、社会保障制度の機能低下や、保険料の値上げという形で、国民全員が負担を強いられることになる。
「弱者を切り捨てるのではなく、可能な限りみんなで助け合う。国民一人一人がこの問題を共有し、社会全体を健康にしていく必要がある」(同)
安倍首相にこの記事を読ませてやりたいね。