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トト(ラース・アイディンガー)はナチス親衛隊の大佐だった祖父を持ち、一族の罪と向き合うためホロコースト研究者になった。現在はホロコースト研究所の研究員として働くが、研究に没頭するあまり心はいつも不安定だ。さらに2年かけて企画した「アウシュヴィッツ会議」のリーダーから外されてしまい、精神状態は最悪に...。そんな時、フランスから来たインターンのザジ(アデル・エネル)の面倒をみることになる。
ザジはトトの下で研修できることに感激したのも束の間、迎えの車がベンツだと知ると、激しく怒り出す。というのも彼女の祖母はユダヤ人で、ベンツのガス・トラックでナチスに殺されたというのだ。ザジはザジでナチスの犠牲となった親族の無念を晴らすべく、ホロコースト研究者になったのであった。
立場は真逆でありながら、親族の過去を通してナチズムの記憶に深くとらわれてしまった二人。最初は対立しながらも、やがて自分にない何かを求めあうように恋に落ちていく。昨年の第29回東京国際映画祭の東京グランプリとWOWOW賞授賞作品。
〝愛と笑いと勇気でタブーの扉を開ける!ナチス映画の歴史を変えるエポック・メイキングな愛の物語〟というキャッチコピーに惹かれて観に行ったが、期待していたのとはまったく違う内容だった。まず、トトもザジもそれぞれに情緒が不安定で性格がこじれ過ぎている。トトはすぐキレるし、ザジはすぐに嘘をついて話をはぐらかす。作り込み過ぎたキャラクター設定のせいで、彼らにほとんど共感できない。さらにユーモアのセンスも非常に難ありで、笑いどころで笑えない。
直接戦争を体験していない被害者・加害者の子孫までもがトラウマを背負って生き、戦争が世代を超えて及ぼす根深い負の影響を伝えたいのはわかるし、こういったテーマを描こうとするとついシリアスに偏りがちなところをあえて喜劇として描こうとしたことについては、確かにエポック・メイキングだと思う。しかし、観客が素直に喜劇として楽しめないというのではもともこもない。
ハチャメチャな展開に目が離せない
物語前半はアクション、下ネタ、ブラックユーモアが満載だが、二人がドイツ、ウィーン、ラトビアとお互いの祖父母の軌跡をたどる旅に出る後半は、ようやくラブストーリーとして落ち着いて見られるようになってくる。しかし、結末はあまりにベタなお涙ちょうだいのロマンスで、これまた拍子抜け。たしかに落ち着くとこに落ち着いたという感じだが、前半のエキセントリックな恋愛模様がまるでなかったかのごとくで、結局、この映画の主題がすっきりと伝わってこない。
トトとザジのハチャメチャぶりに良い意味でも悪い意味でもスクリーンから終始目が離せず、急展開が続くストーリーは、見ていてダレることはない。たまには風変わりな映画を観たいという人にオススメ。
おススメ度☆☆
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