逆境に耐え、努力した黒人女性たち 宇宙への道ささえる
〈ドリーム〉

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©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

   結論から言うと、今年一番泣きました。ときは1960年代、ソ連との宇宙開発競争が白熱するNASAでの有人飛行計画を支えた人々をモチーフにした物語というだけでもう、涙腺がじわり。しかも主人公は3人の黒人女性とくれば、少なからず「虐げられる黒人女性と無能な白人男性」を予想してスクリーンに向かったのだけれど......想像以上に「賢い」主人公たちの姿にがっぽり感情移入!

   NASAで計算係として働くキャサリン・ドロシー・メアリーは、もしも白人男性に生まれついていたら、とうに技術職として登用されていると自認する世紀の天才数学者たち。それでも黒人だから、女だから、難しい仕事や責任ある仕事はできないとされ、テンポラリの計算業務に従事している。

   彼女たちに巡ってきたチャンス、それはアメリカがロケット計画でソ連に遅れをとったこと。誰でもいいからできるやつを連れてこい!というスクランブル指令に乗じ、宇宙計画の最前線に乗り込むチャンスを得たのだ。とはいえ、それは簡単な道のりではない。キャサリンは、ロケットの離発着の予想と制御という花形部署に派遣されたが、あくまで計算係としての扱い。勤務する敷地には黒人用トイレもなく、同僚には露骨に疎まれ、検算の仕事をしようにもデータも満足に渡されない。それでも、実力で既存の計画の不備を指摘し、数学者としての能力で頭角を表す。

   メアリーは上司に恵まれ、当初から諦めていた技術職への登用試験を受ける決意をする。しかし、受験資格を満たすには、白人専用学校でしか受けられないカリキュラムを修了する必要があり、司法の場で通学の権利を勝ち取るよう求められる。

   ドロシーは、NASA計算チーム東グループの実質的なグループマネージャー。それなのに、黒人に管理職は任せられないと我慢を強要され、はや一年。しかも、IBMのメインフレーム機導入により、チームには刻一刻と危機が迫っている......ドロシーは、手計算からコンピューターへという時代の移り変わりを読み、我流でプログラミングの勉強と後進の育成に乗り出す。

   彼女たちの賢さ、強さは手放しで素晴らしいのだけれど、特筆すべきはおしきせの対立の構図ではない。圧倒的な能力を持つのに、「黒人女性だから」とキャリアを諦めてしまっていた彼女たちが、痛みや苦労を恐れずに、日陰で信頼を重ねていく姿だ。報われない中で前を向き続けるpatienceに涙が止まらない。

   1キロ先の敷地のトイレしか使えないキャサリンに対し、何をさぼっているんだと声を荒げる上司にも、キャサリンは毅然と答える。粗雑に扱われても、悪態のひとつもつかず、あくまで丁寧な物腰でフラットに接する。卑屈にもならず、声高に権利を叫ぶわけでもない。耐え忍ぶのが尊いと言いたいわけではない。聡明で、忍耐強く、芯が一本通った彼女たちの姿を見ているうちに、負けるもんかというエネルギーがわいてくる。

   そして、本筋とは関係ないけれど、身体のラインに沿ったドレスに、カツカツ鳴るピンヒール。丸いヒップラインがとってもキュート!テンポの良さや小気味いいやりとりが、お仕事パートの傍らの家庭の場面を盛り立てる。観終った時は、もうちょっとだけ明日は頑張ろう、と思える最高のナニクソ映画。

おススメ度☆☆☆☆

ばんぶぅ

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