今年(2017年)のノーベル文学賞に決まったのは日系イギリス人カズオ・イシグロ氏(62)だった。日本では村上春樹への期待が高まっていたが、海外では村上と並ぶ有力なノーベル賞候補者だった。文芸批評家で早大准教授の市川真人氏は「2015年の時にも、(ノーベル賞予想の)ブックメーカーの順位に入っていました。ダークホースではなくて、次の世代のノーベル賞作家といわれる1人でした」と話した。
とはいえ、日本ではやはり知られていない。昨夜配られた号外を見た人たちのほとんどは「ええ、ハルキ(村上春樹)じゃないんだ」という反応だったが、「素晴らしい作家だと思います」「原作をむかし読んだので、もう1度読み返してみよう」などの反応もあった。
TBSで「わたしを離さないで」
イシグロ氏は1954年長崎生まれで、幼少時に両親とイギリスへ移住し、その後に英国籍になった。妻と娘とイギリスに住んでいる。
1982年の「遠い山なみの光」で作家デビューし、「日の名残り」でイギリス最高の文学賞「ブッカー賞」を受賞。「現代英文学で最も重要な作家の1人」として高い評価を受けている。他に、「わたしたちが孤児だったころ」「わたしを離さないで」「浮世の画家」「夜想曲集」など多数ある。
市川准教授は「人と人との情愛が描かれ、読み終えた時にそこに触れた感じが強く残る作風です」と説明する。100万部を超えるベストセラーとなった「わたしを離さないで」は、綾瀬はるか主演で昨年冬にTBSでドラマ化され、臓器を提供するためだけに生まれたクローン人間の運命を描く特異な設定と物語の展開は、大きな衝撃を与えた。
綾瀬はイギリスにイシグロ氏を訪ねてもいた。イシグロ氏は英語で「伝えたいと思ったメッセージは、人生は短いということです。避けられない死に直面した時、何が重要なのか。そういうテーマについて書きたいと思いました」と話していた。
イシグロの受賞に、綾瀬は「『わたしを離さないで』は私にとって宝物です。この受賞を機会に、より多くの皆さんがイシグロさんの作品に触れられて、心に響くことを願っています」とメッセージを寄せた。