「カフェイン中毒」あなたは大丈夫?エナジードリンクがぶ飲みや錠剤多用

   エナジードリンクが若者に人気だ。カフェインが眠気覚しや元気付けに効くと思われていて、昨年(2016年)の売り上げは505億円、前年比15%増と2年連続で右肩上がりになっている。しかし、過剰摂取による急性カフェイン中毒で死者まで出ている。

   日本中毒学会が全国38の病院で行った調査では、急性カフェイン中毒の救急搬送が5年間で101人もあった。平均年齢は25歳と若い。東京23区内の死因不明の死者のうち36人の血液から、高濃度のカフェインが検出されている。

   派遣仕事の女性(28)は4年前、エナジードリンク3本と栄養ドリンク1本を飲んだ直後、悪寒と手足のしびれで立っていられなくなった。病院の診断は「急性カフェイン中毒」。以来まとめ飲みはしないが、いまだに手放せない。「飲まないと不安になるんです。飲むと全然違う。歩いても疲れなくなる。できないことができるような気になるんです」と話す。

「集中力が高まる」「気分がハイになる」

   カフェインは神経細胞を刺激して眠気を防ぎ、集中力を高める作用がある。覚せい剤やコカインと同じ興奮系(アッパー)依存性薬物で、興奮作用は弱いが依存性がある。短時間の過剰摂取は健康被害を招く。

   20歳の女子大生はエナジードリンクの愛飲者だった。受験勉強に集中できたが、だんだん効果がないように感じて錠剤に目を向けた。海外の安いものを入手して服用して救急搬送された。注意書きには英語で「3~4時間あけて1日3錠まで」とあったが、字が小さくて気づかず、4時間に6錠を飲んだのだった。医薬品なのに「サプリの認識だった」という。日本中毒学会の調査では、カフェイン中毒の9割以上が錠剤だった。

   28歳の女性は失恋して自殺を考えていた。首吊りや飛び降りる勇気はない。ネットで、自殺の手段として錠剤が紹介されていた。入手して8錠飲んだ。途端に視界が真っ暗になり、手足のしびれが続いた。

   「成人で短時間に1000ミリグラム以上」というのがカフェイン中毒の目安という。エナジードリンクで7本、錠剤で5~10錠に当たる。ドリンク1本は36~150ミリグラム、コーヒー1杯90ミリグラム、栄養ドリンク1本30~50ミリグラム、錠剤は1錠100~200ミリグラムだ。敏感な人は200ミリグラムでも中毒症状はあるそうだ。

だんだん効かなくなって、気が付くと依存症

   国立精神神経医療センターの松本俊彦・薬物依存研究部部長は、「昔は大人になってからコーヒーの味を知りました。いまはエナジードリンクで10代からカフェイン体験してカフェイン効果は慣れるから、量が増えて錠剤へいく。危険です」と警告する。カフェインの薬理作用の研究をしている東京福祉大の栗原久教授によると、カフェイン自体のの興奮・覚醒作用は弱いので、効果が強まる物質が新製品開発に使われている。「薬物なのに、安全性評価をしていないんです」

   厚生労働省ホームページでカフェイン過剰摂取に注意を喚起しているが、内容は諸外国の例を示しただけだ。NHKの取材に「制限や規制を検討する予定はない。そのためのデータ的裏付けもない」と規制には消極的だ。なぜか。カフェインはさまざまな食品、お菓子にまで含まれ、規制を強めると影響が大きいからだ。

   松本さんは「全部の規制は難しいですが、錠剤の規制は可能です。子供には飲ませるべきではありません。カフェインは元気の前借り。一時は元気になっても、後で2倍も3倍も疲れます。一方でメリットもありますから、上手に付き合うことです」と話した。

NHKクローズアップ現代+(2017年9月21日放送「急増!カフェイン中毒 相次ぐ救急搬送 いま何が」)

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