9月16日(土曜日)発売の週刊ポストが、巻頭で「安倍『火事場泥棒10・22解散総選挙』へ!」と報じた。
大メディアが臨時国会冒頭解散を報じたのは17日になってからである。締め切りを考えれば、週刊ポストのこの特集はスクープといってもいい。
週刊ポストによれば、9月10日夜、麻生太郎は渋谷区神山町の自宅からすぐ近くの富ヶ谷にある安倍晋三の私邸を訪れた。
麻生を安倍のところへ走らせたのは、週刊文春(8/31号)の民進党・山尾志桜里の不倫報道、その後の離党であった。
「これで麻生氏の目の色が変わった」(週刊ポスト)という。
民進党は離党者が続出してこれからもっとボロボロの状態になっていく。「麻生さんは絶好のチャンスと判断して『今なら勝てる』と総理に早期の解散・総選挙を強く進言したのです」(麻生側近)
だが、危機管理の責任者である菅官房長官は、北朝鮮情勢が緊迫している時に解散するべきではないと反対していた。
11月にはトランプ米大統領が来日するといわれている。そんなタイトなスケジュールの中で解散・総選挙をすべきではない。真っ当な考えである。
菅が反対なのを知っている麻生は、菅のいない安倍の私邸に押しかけたのである。
安倍にも解散をためらう大きな理由があった。憲法改正をやりたいが、解散すれば改憲発議に必要な現有3分の1以上の勢力を失うリスクがあるからだ。
麻生ら解散推進派が説得材料に使ったのは、安倍の大叔父・佐藤栄作がやった「黒い霧解散(66年)」だという。
自民党議員がからんだ贈収賄事件や国有地売却の不透明な取引が相次ぎ、メディアから「黒い霧」だと批判を浴びた。
そこで佐藤首相は「綱紀粛正する」と発表、意表を突いて66年12月の国会冒頭で解散に踏み切ったのである。
苦戦が予想されたが、自民党はほとんど議席を減らさなかった。落選中だった安倍の父・安倍晋太郎もこの選挙で返り咲いた。
中曽根の「死んだふり解散」、小泉純一郎の「郵政解散」など、佐藤以外にも突然解散したケースはあるが、そのいずれも自民党が勝っているというデータがある。
そうした入れ知恵に、優柔不断な安倍の心は揺れ動いた。そして決断した。
安倍ポチ新聞といわれる産経新聞と読売新聞がともに社説でこう書いた。
「安倍晋三首相は、北朝鮮危機の下で、衆院を解散する道を選択した」(産経)「安倍晋三首相が28日召集予定の臨時国会冒頭にも衆院を解散する方針を固めた。総選挙は『10月22日投開票』の日程を軸に政府・与党は調整に入っている」(読売)
だが、朝日新聞が社説でいっているように、
「安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。(中略) 重ねて記す。野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3カ月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。 まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある」
有権者の憤懣が爆弾低気圧になる可能性
自民党の中からも少なからず、大義がない、改憲のための論議が尽くされていない、北朝鮮危機がどうなるか分からないのに政治空白をつくっていいのか、など批判の声が出て、日増しに大きくなっている。
週刊文春は、安倍の盟友・山本一太参院議員がブログで、「有権者の憤懣は(短期間のうちに)自民党に対する爆弾低気圧にまで発達する可能性がある」と書いていると報じている。
また、連立与党の公明党は、憲法改正、特に9条の改正には慎重な姿勢を表明しているのである。
総選挙をやれば現有勢力から減ることは100%間違いない。
一部報道では、安倍はトランプから、北朝鮮危機が本格化するのは来年だと聞いているから、その前にやってしまえと決断したという。
だが、それが本当なら、国民にその根拠を明らかにすべきこと、いうまでもない。
アメリカや日本、韓国の動きを注視している北朝鮮が、日本の政治空白の隙を突いて何かを仕掛けてくることは十分に考えられる。なぜそのような危険な「賭け」をする必要があるのか。