日本人初は、東洋大の桐生詳秀選手(21)だった。おととい9日(2017年9月)行われた陸上の日本学生対校選手権(福井市)、100メートル決勝で9秒98を出した。素晴らしい快走だった。日本新記録も19年ぶりに塗り替えた。ニュースは日本中を駆け回った。次は誰が......。
桐生選手は5レーンだった。ひとつ置いた3レーンはライバルの多田修平選手(21)=関西学院大。多田はスタートが抜群にいい。飛び出す多田を桐生が追う。これまでならもつれるところを、桐生は抜き去り、差を広げてゴールした。
速報では9秒99と出た。どよめくスタンド。正式タイムが出た。「9:98」だ。桐生が飛び上がって、トラックを走った。スタンドは総立ちで拍手だ。
桐生は、「やっと、4年間くすぶっていた自己ベストが更新できた」と言った。これまでの日本記録は伊東浩司選手が1998年12月に出した10秒00。桐生が、これに続く10秒01を出したのは高校3年の春、織田記念国際陸上だった。以来、「今日こそは9秒台」と言われ続けながら、かなわなかった4年間だった。
ライバルが台頭、日本代表に漏れる
タイムも2度と出なかった。どころか、去年のリオ・オリンピックでは予選で敗退。ライバルも現れた。タイムで歴代トップ10に5人もいる混戦になった。6月の日本選手権での直接対決で、桐生は4位となって、世界選手権の個人種目での出場を逃した。
代わって上位に入ったのが、サニブラウン・ハキーム、多田、ケンブリッジ飛鳥だった。特にレースの後半、スピードに乗れず置いていかれる展開が続いていた。世界選手権では、リレーのメンバーとしてメダルはとったが、桐生が望むものではなかった。
学生対校でも本調子ではなかったらしい。左太ももに違和感があって、練習も満足にいかず、決勝直前まで棄権も考えていたという。だが、走ってみれば目を見張るような走りだった。特に後半の伸びで、2位の多田に数十センチの差をつけていた。その多田のタイムは10秒07。1メートル足らずが0秒09もの差になる。
一方で、「9秒台は時間の問題だった」という人もいる。日本陸連の高野進さんは、「実力はあるのに、自分で壁を作って勝手に足踏みをしていた感じ」という。今回は、「タイムじゃなくて勝負に出た。ライバルより前に出る。自然に本能でできる」と。やっぱり日本選手権で負けてよかったのだ。
司会の加藤浩次「9秒台、素晴らしい。歴史に名前が刻まれた」
杉山愛(元プロテニスプレーヤー)「4年間で、0秒03縮めた。先が楽しみ」
五輪や世界選手権の決勝進出最低タイムは、今年のロンドンの世界選手権がいちばん遅くて、10秒10。前回北京では9秒99だった。「9秒台だぁ」と喜んでいられる状況じゃない。でもスタジオはご祝儀ムード。
高橋真麻(フリーアナ)「前に誰かが、1人が10秒破ったら、トントントンと行くんじゃないかと言っていたけど、そうなるかも」