北朝鮮が3日(2017年9月)昼、6回目の核実験を強行した。朝鮮中央テレビは「水爆をICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載できる実験を完全に成功した」と発表。日米韓など各国も北朝鮮による過去最大規模の実験と捉えている。
果たして本当に水爆なのか、原爆との違いは? 水爆だとしたらどの程度の威力なのか? 番組には、元防衛研究所統括研究官の武貞秀士拓殖大特任教授、核実験に詳しい東京工業大学の澤田哲生助教、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏らがナマ出演し、今回の実験の真相を探った。
実験は、3日午後0時29分ごろ、北朝鮮北東部・豊渓里の核実験場で行われた。韓国気象庁は同時刻にマグニチュード(M)5.7、日本の気象庁はM 6.1、米地質調査所もM6.3の地震を観測。日本の気象庁は「過去(北朝鮮の核実験)の10倍程度の大きさ」と分析した。
北朝鮮・労働新聞はこの日午前9時に、金正恩委員長が核兵器研究所を訪れ、ICBMに搭載する水爆とみられるヒョウタン型の装置を視察している写真を掲載し、金委員長が「水爆のすべての構成要素が100%国産化され、今後、強力かつ威力ある核兵器を思い通りにどんどん生産できるようになった」と述べたと伝えている。
では、水爆と原爆とはどう違うのか? 水爆は重水素やトリチウムなどを核融合させる核兵器。ウランやプルトニウムの核分裂を利用する原爆よりもはるかに膨大なエネルギーが発生する。
核融合を起こさせるには、高温高圧状態が必要になり、原爆を起爆剤にする。今回、北朝鮮はひょうたん型の容器を公開したが、片方の球体に詰めた原爆を爆発させ、もう片方の球体に詰めた重水素などの燃料に衝撃を与えて核融合を起こさせる仕組みとみられる。
今回の爆発の規模について小野寺五典防衛相は「約70キロトン(TNT火薬換算)と推定され、我が国に大きな脅威になる」と述べたが、広島の原爆の威力16キロトンと比べけた違いの規模になる。
1000キログラムの1000倍が1キロトン。1キロトンの爆発では半径1.5キロの範囲内に遮蔽物が何もなければ全員死亡するという。
しかも澤田助教は「今回の実験は地下室の実験場のなかで行われ、周りが強固な岩盤に覆われているのを考慮すると、70キロトンよりも規模は大きく300キロトン程度の規模」と推定する。その場合、半径7キロ、JR山手線内が壊滅状態になるという。
米国が1952年にマーシャル諸島ユルゲラグ島で行った水爆実験では、広島に落とした原爆の数百倍の威力で、島が直径2キロ、深さ50メートルのクレーターができ島が消滅している。
ただ、軍事に詳しい黒井氏は「今回の実験が水爆かどうか観測値がバラバラだし精査が必要だ。防衛省が発表した70キロトンの爆発規模なら原爆でも可能だ」と慎重な発言をしている。
北は急ピッチで開発
これに対し武貞教授は次のように強調する。 「アメリカが原爆を広島、長崎に落とし水爆実験するまで7年かかったのを考えると、非常に急ピッチで水爆、ICBM、核弾頭の爆破に至っている。世界的に北朝鮮の軍事技術はたいしたことはないと先入観で判断をしてきた。しかしハッと気が付いたら目の前にすごい爆発物を持った、国際社会の忠告に耳を傾けない国がいたということだと思う」
では、水爆かどうか大気中の汚染物質で確認はできないのか? 澤田助教によると、水爆でしか出てこない物質があり、その物質が確認されれば水爆の確率が高まるという。
しかし「北朝鮮は汚染物質が大気中に漏れないように閉じ込める技術を前々回の実験で完全に成功したと言っており、出てこない可能性がある」という。