「今後も太平洋を目標とするミサイル発射訓練を頻繁に行う」
北朝鮮が29日(2017年8月)早朝に発射した弾道ミサイルについて、朝鮮中央通信が30日午前7時すぎ報じる中で、金正恩委員長がこう述べたと伝えた。北朝鮮は日本を標的にした戦略に変えたのだろう。日本は新たな対応を迫られそうだ。
朝鮮中央通信が報じた29日のミサイル発射について要約すると、狙いは次の通りだ。
・『火星12』は北海道の渡島半島と襟裳岬上空を通過し目標水域に命中した。
・(狙いは)米韓合同軍事演習に対する対抗措置だ。
・あえて日韓併合条約交付日の8月29日に残虐な日本の人々が気絶するほどの大胆な作戦を展開した。
平壌の国際空港の滑走路から発射
発射場所は、平壌市須安にある国際空港滑走路。番組にゲスト主演した鈴木琢磨・毎日新聞部長委員によると、「発射1時間半前に空港に到着した人に聞いたところ、北京行の定期便が離陸する直前に発射したと話していた」という。
朝鮮中央通信HPでは 、空港内のガラス張りの部屋で発射するミサイルを見ている金委員長の映像や発射の成功を喜んでいるのだろう、関係者と共に喜色満面の笑みを浮かべる金委員長の映像を公開した。
この滑走路でのミサイル発射の意図について武貞秀士・元防衛研究所統括研究官は「奇襲もできると自信を示したかったということなのでしょう」と見る。
問題は、落下した襟裳岬1180キロの太平洋上の場所と時間。当時、付近の上空にはバンクーバー行の中国南方航空377便とサンフランシスコ行のフィリピン航空104便が飛行中だった。
さらに、落下した海域は今が旬のサンマの漁場。日本の漁船74隻が操業中で、武貞秀士は「本来、通告すべきところを通告なしで、我々にとって最悪のミサイル発射だった」。
では、なぜ日本を標的に変えたのか?
鈴木氏は「日本に脅しをかけながらアメリカにメッセージを送る含みを見せたのではないか。父親の金正日時代は日本を刺激しないよう慎重だったが、息子は踏み込んで傍若無人、好き勝手にやっている感じだ」。
一方、武貞氏は「1910年8月29日の日韓併合の記念日に発射したのは、アメリカをあまり挑発はしませんよ、日本なんだぞというところを見せたかったということ。言外にアメリカとの対話の道をニュアンスとして残しながら、色々実験をしたのでしょう」。
太平洋を目標に発射訓練を頻繁に行うということは、つまり日本列島の上空を飛び越えるミサイル発射訓練を頻繁に行うつもりらしい。日本もJアラートだけで安閑としてはいられない。脅しに屈しない新たな対応を考えざるを得なくなった。