テレビに勢いあった「昭和」の空気を再現 亀梨和也が好演
〈24時間テレビドラマスペシャル 時代をつくった男 阿久悠物語〉(日本テレビ系)

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   これまでの「24時間テレビドラマスペシャル」といえば、昨年の「盲目のヨシノリ先生~光を失って心が見えた~」(主演・NEWS 加藤シゲアキ)や、一昨年の「母さん、俺は大丈夫」(主演・Hey!Say!JUMP 山田涼介)など、難病モノがお決まりだったが、今年は違った。"昭和のヒットメーカー"作詞家・阿久悠の物語だった。

   子どもの頃、「スター誕生!」を見ていて、どうしてこの人はこんなに偉そうにしているんだろうと不思議だった。アイドルを夢見る女の子たちを容赦なく、厳しく責める。審査員席の阿久悠はとにかく怖かった。

   「スタ誕」がスタートしたのが1971年10月、阿久悠は1937年生まれなので、当時34才だったことになる。現在34才の芸能人はというと、松田龍平、嵐(二宮和也、松本潤、相葉雅紀)オリエンタルラジオ(中田敦彦、藤森慎吾)、タッチ(かずや・たくや)、もう中学生......。時代もあるのだろうが、今のメンツと比べると、阿久悠の貫禄は凄すぎた。あの貫禄はどこから来たのか。そもそも阿久悠とはどういう人だったのか。そんなことがすべて詳らかになった今回のドラマ、率直に言うと期待以上に面白かった。

   阿久悠を描くと同時に、"昭和"という時代、そして、"テレビ"に勢いがあった時代の空気をリアルに再現していて、同時代を知るモノとしては懐かしくもある。昨年の「トットてれび」(NHK総合)は黒柳徹子を軸に当時のテレビ界を描いていたが、今回の「阿久悠物語」はその民放版といった感じ。懐かしVTRもうまく織り交ぜ、実にうまく作られていように思う。

   阿久悠を演じたKAT-TUN亀梨和也も好演。予想以上にハマっていた。2009年、日テレで阿久悠を主役にした「ヒットメーカー 阿久悠物語」という特番ドラマが作られ、その時の阿久悠役は田辺誠一が、そして、2013年NHKBSで作られたドキュメンタリー・ドラマ「プレミアムドラマ"歌謡曲の王様伝説 阿久悠を殺す」では吹越満が阿久悠を演じていたが、亀梨も彼らに負けず劣らず、阿久悠に見事になりきっていた。

   広告代理店のサラリーマン時代から、アルバイトで放送作家をやり、ものを書く仕事をするために退社し、作詞を書くようになり、「時代を作る流行歌を生み出したい」と本格的に作詞の世界へ飛び込む。「スタ誕」の立ち上げに参加し、自ら審査員として出演。ところが初回視聴率は4.7%と大苦戦......。なんとしてでもスターを生み出さねば、と白羽の矢が立ったのが森昌子。デビュー作「せんせい」はもちろん阿久悠の作詞だ。桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美など、次々にスターを輩出し、ついにはあの社会現象にもなったピンクレディーが登場する。

   やがて、ニューミュージックの時代になり、阿久悠は流行歌の時代が終わる。取り残された阿久悠の心の叫びが「時代おくれ」(唄・河島英五)という歌になるのだ。余談だが、うちの兄はカラオケに行くと必ずこの「時代おくれ」を歌うのだが、なんだか長いしかったるいので、いつもトイレタイムにしていたが、今回、ちゃんと聴いて、なんていい曲なんだろうと反省した。

   会社員時代の同僚、漫画家上村一夫(田中圭)との友情、支えてくれた妻(松下奈緒)との家庭など、プライベートの阿久悠を描いたことで、阿久悠がどういう人だったかもよくわかった。

   残念なのは、阿久悠の未発表の詩に、つんく♂が曲をつけた新曲「子供たちの未来をよろしく」。五木ひろし、八代亜紀らが歌ったのだが、練習不足か、バラバラでひどかった。せっかくの歌詞が台無しだ。それに比べて、亀梨が沢田研二になりきって、阿久悠の「勝手にしやがれ!」を披露。ジュリーになりきり、オーラ全開、色気をふりまくる亀梨のパフォーマンスもなかなかよかった。あれっ。今回の「24時間テレビ」、終わってみればすっかり亀梨のファンになったかも!?

   (8月26日)

くろうさぎ

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