<海辺の生と死>
美しい奄美の自然、文化の中で燃え上がる恋

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   太平洋戦争末期の1944年12月。奄美群島・カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)の小さな集落に海軍の特攻艇部隊が駐屯する。隊を率いる朔隊長(永山絢斗)は、島の子供たちに優しく「隊長様」と慕われ、軍歌よりも島唄を歌いたがる軍人らしくない男だった。国民学校教師のトエ(満島ひかり)は朔に次第に心惹かれていく。そんなある日、トエは朔からの一通の手紙をもらう。それをきっかけに、トエの思いは自身も戸惑うほどに狂おしい愛となり、2人は次第に激しい恋に落ちていく。しかし、朔が出撃する日は刻一刻と迫っていた。

   原作は島尾ミホの同名の小説。主人公・トエはミホがモデル、朔はミホの夫であり『死の棘』の作家・島尾敏雄がモデルとなっている。

   155分という長編で、決して展開もテンポが良いわけではないものの、どのシーンも無駄がなく、中だるみすることなく最後まで観ることができた。波や風の音、鮮やかな花の色、鳥の声、島唄、祭りの舞いなど熱帯情緒あふれる奄美の自然や文化がとても美しく写し取られており、とくにトエの中で現実と夢の境界があいまいになっていく物語後半では、それらが混然一体となって大きな効果をもたらしている。

満島ひかりの体張った演技見ごたえ

   また、ここ数年の出演作ですっかり演技に定評がある満島は、今回も非常に良い演技だった。表情や佇まいだけで見せる繊細な感情表現はもちろん、朔に会いに行くために波が打ち寄せる夜の岩場を這ったり、クライマックスではヌードシーンもあるなど、体も張っていて見ごたえばっちりである。

   それにしても、島尾ミホといえば夫・敏雄が書いた私小説『死の棘』で、夫の浮気をきっかけに発狂した妻であることはあまりにも有名。今回のトエも感受性が豊かで、たしかに気性の激しさは垣間見えるが、まさか数十年後にそんな恐ろしい事態になろうとは・・・。戦時下に恋の甘美に酔いしれていた当時の朔(敏雄)には、まったく予想もつかなかったことだろう。やはり人生、一寸先は闇だなぁとしみじみ。

おススメ度☆☆☆

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