農水省が昨日(2017年8月1日)、輸入冷凍牛肉への「セーフガード(関税緊急引き上げ措置)」を発令して、一部の関税を38.5%から50%へと大幅に引き上げた。アメリカ産などの安さが、焼肉店を支えているだけに、影響は必至だ。冷蔵肉への跳ね返りなども懸念されている。
繁盛する焼肉店はどこも、安値が売りだが、それを支えるのが輸入の冷凍肉だ。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド産が多いが、今回の措置は、そのオーストラリアでの干ばつが原因だという。オーストラリア産が減ったのを、他地域で埋める必要があり、他地域からの輸入量が増えたのだ。
農水省によると、セーフガードは、4~6月の輸入量が基準値を超えたアメリカ、ニュージーランド、カナダ、EUに対して発動された。セーフガードは、特定の輸入品目の輸入急増で、影響を受ける国内の産業を保護するための緊急措置として、世界貿易機関(WTO)のルールで認められている。
関税率は、優遇的に引き下げていたものを、本来の率に戻したということらしいが、50%は大きい。アメリカ産のカルビだと、国産の半分以下という安さで、これが多くの大衆焼肉店の主力として、人気を支えてきた。その関税が1割以上も上がるわけだ。
スーパーは量目減らして対応
都内のあるスーパーでは、牛肉の半分が輸入品。関税が上がったからといって、そのまま小売値に上乗せできないのが実情だ。となると、「少しずつ量目を減らすような形にするしかない」という。値段は同じだが、量をちょっと減らすということだ。
セーフガードそのものが、値段を上げて輸入量を減らすという政策だから、値上がりは仕方がないが、量が減れば、他の種類への需要が高まる。これが牛肉全般、特に冷蔵肉の値段にも跳ね返るのではないかと、スーパーでは懸念していた。
一方、セーフガードの対象となった国からは早速反発が出た。アメリカのパーデュー農務長官は、「日本との重要な貿易関係を害するものだ」と批判した。
宮崎哲弥(評論家)は、「オーストラリアの干ばつが原因なんですね。不足分を他の国から調達した結果、輸入量が増えて、需給のアンバランスができてしまった。だからこれをアメリカにいっても、なかなか納得はしてくれない。丁寧に説明するしかない」
岩本乃蒼アナ「今回のセーフガードは、来年(2018年)の3月31日までということです」
セーフガードは、WTOの前身であるGATT(関税貿易一般協定)以来の、長い論議と妥協の産物。生産者の保護が消費者の利益と対立する宿命は、どこの国でも同じことだ。