ビットコインがきょう1日(2017年8月)にも2グループに分裂する可能性が高まっている。流通量が膨れ上がっているためだ。ネット上の取引で価格が高騰して巨額の利益を得る人も出る一方でトラブルも起きている。「すでにバブル」の声もある。何が起きているのかを検証した。
仮想通貨はパソコンやスマホにデータとして存在し、銀行を介さずに世界中に送金できる。買い物や飲食に使える店が国内でも増えてきた。代表的なビットコインのほかにも1000種類以上が出回っている。
これを投資目的で売買する人も増えた。株をやったこともない40代の主婦が低金利時代の投資として4万円分のビットコインを購入したら「あれよあれよと言う間に値上がり」して、その利益で他の仮想通貨も買い、5カ月で150万円になったという。「こんな世界があるんだと思いました」
都内の取引業者が扱う月ごとのビットコイン取引量は去年(2016年)の28倍に増えた。今では他の仮想通貨もふくめると国内100万人以上が取り引きしているという。
コインチェックの大塚雄介さんは「以前は東京の20代、30代でITに強い人が買うイメージでしたが、今は地方の60代から老若男女多くの人が使う市場になってきました」と話す。
大もうけした人をさす「億り人」(おくりびと)という言葉も生まれた。元IT企業のシステムエンジニアだった一人は「ゲームのスコアぐらいに考えていた。ゲームとしておもしろい」という。
仮想通貨は円やドルと違って、政府や中央銀行などの管理者はいない。国境を超えて自由にやりとりできる。プログラムで発行量を定めるために乱高下しやすい。半年前に1000億円ちょっとといわれた発行規模は、いま5兆円に膨らんだ。
岩下直行・京大大学院教授は「皆が現金にしようとしたら暴落してしまう」、本間善實・日本デジタルマネー協会代表理事は「根拠のない熱狂はいつまでも続くものではない。あした崩壊してもおかしくない」と指摘する。生産や価値の裏づけが「仮想」にはないためだ。
思わぬトラブルも起きていた。2年前にセミナーに参加した男性は「放っておくだけで3倍、4倍になる」と言われて、その場で市場に出回る前の仮想通貨120万円分を買い、代金を振り込んだ。1年後、発行元の会社から「オープンできない」というメールが届いた。ロンドンにある住所をNHKがたずねるとレンタルオフィスで、業務はしていなかった。登記情報を調べると休眠状態だった。男性は「負の面の説明はなかった」という。買い物も換金もできない。
国民生活センターへの相談が去年1年間の847件から今年はすでに539件に達した。本間さんは「夢のない時代に夢のある話なので飛びつきやすく、リスクが理解されていない。技術の裏づけがない、信用のない人たちが売っている」と語る。
分裂でどうなる?
ビットコインがきょう1日(2017年8月)午後9時20分ごろにも2グループに分裂する可能性が高まっている。発行量が大きくなりすぎて、支払いや送金に時間がかかるようになったためだ。7月14日に国内取引の受入れと支払いが一時停止され、価格も乱高下している。200万円分を持つ女性は「朝起きたら60万円下がっていた。今はできるだけ考えない、考えない感じです」という。
二派のうちカナダの会社は一つ一つのデータを小さくすることで素早く処理し、安全性も高める改善案を提示、日本の取引業者にも支持を求めている。
一方の中国の事業者は、正反対にコンピュータの記憶容量を拡大することで処理量を増やす案だ。本間さんは「ユーザーがどう反応するか、市場競争で判断されるだろう」という。分裂すればビットコインとビットコインキャッシュに分かれ、保有者は二つを持つことになる。岩下教授は「今は実験段階で、これからもっと技術改良していかなければなりません」
「これで大丈夫なんですか。私たちはどう接すればいいのか」と、武田真一キャスターが心配する。
本間さんは「ハイリスク・ハイリターンということをよくわかったうえで投資してほしい」と注意を促す。武田キャスターは「未来のあり方を根本から変える可能性がありますが、まだ試行錯誤にあるといわれます」と実験段階を強調してまとめた。現状を概観する放送内容は、「これ、なんだろう?」と戸惑いつつの分析にとどまった。仮想通貨が浮かれた成り金やトラブルのもとを作る投資以外にどこまで必要なのか、混乱を防ぐ方策はないのか、そこを早く知りたいものだ。