死んだ人は戻らないけれども......
〈君はひとりじゃない〉

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 (C)Nowhere sp. z o.o., Kino?wiat sp. z o. o., D 35 S. A., Mazowiecki Fundusz Filmowy 2015 all rights reserved.
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   検察官として働くヤヌシュは、精神的支柱であった妻を亡くし、喪失感を拭えず、仕事で悲惨な死体を見ても何も感じなくなってしまった。娘のオルガも心を病み摂食障害になり、父親の前で奇行な振る舞いをする。やせ細っていく娘を心配したヤヌシュはオルガをセラピストの元へ通わせてリハビリを行うが、セラピストのアンナの療法は常識を逸脱していた。アンナは霊媒師としての能力があり、オルガの母親=霊について語っていく...。

   第65回ベルリン国際映画祭で監督賞となる銀熊賞を受賞し、ポーランドのアカデミー賞であるイーグル賞で主要4部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞)を受賞した話題作。監督はポーランドの俊英女性監督マウゴシュカ・シュモフスカ。

   冒頭、首を吊って死んだ男が、警察の手で木から降ろされる。しばらくしてから、何事もなかったように起き上がり、歩いて何処かへ行ってしまう。本作の原題は『Body』。映画の中では死者と生者の肉体は確かに存在しており、死生観の境界は曖昧だ。子どもを喪ってから死者と交信する能力を授かり、死者と生者との境界線として描かれているアンナが物語の訴求力となっていく。しかし本作は以外な「盲点」を描いていく。

   家族の中心であった「母」ともう一度会話をしたい――ヤヌシュとオルガの共通意識であるのは確かだが、二人とも霊の存在を完全に信用してはいない。しかし、あやふやなものだろうがなんであろうがヤヌシュとオルガはアンナという霊媒師を介在することにより、真摯に向き合い、バラバラになりかけていた気持ちをつなぎとめた。ラスト、いよいよアンナが交霊術を実行する時、本作が傑作であることを確信する。霊が降りてこようがこまいが、ヤヌシュとオルガの笑顔は変わらない。アンナの霊媒師としての能力や、霊の存在の有無など、どうでもいいことなのだ。はっきりしているのは、アンナはセラピストとしての仕事を全うしたということだろう。もしかしたら全てはアンナの計算の範疇なのか。そこまでは語られていない。

おススメ度☆☆☆☆

丸輪 太郎

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