4年前、日本で初のいじめに関する法律「いじめ防止対策推進法」が作られた。「いじめられたと感じたらいじめ」と定義し、重大被害(自殺などは)が起きた場合は徹底調査するなどと定めた。しかし、昨年度はいじめの疑いで自殺した子供が14人と、この10年で最多。また、いじめが疑われた事例で、学校や教育委が当初、いじめを認めないケースが少なくないという。
約1年半前、自殺した茨城県取手市の中学3年女子生徒は、日記に「いじめられたくない」「ぼっちはいやだ」といった記述を残していたそうだ。生徒からも、いじめを想像させる証言などが複数あったが、教育委は当初、「いじめはなかった」と判断したそうだ。
「教育委員会として、(いじめを)なしにしたいとか、隠蔽したいとか、そういう思いはなかった」(取手市教育委員会教育長)
一方、関係者への取材では、「生徒にいじめの疑いをかけるということは非常に重い。何かあったときにも、生徒たちを犯人扱いしないのが原則だ。目の前で見ていない限りは。もし万が一、間違ったら大変だ」「(いじめの)疑いを認めるということは、自死につながったいじめがあったということを認めることと捉えられてしまう」などの声があったという。
また、生徒への聞き取り調査では、「生徒たちを動揺させないための配慮」(教育長)から、「(自殺した生徒が)学校生活で悩んでいるようだったが、それに関してわかることはありますか」といった曖昧な表現が使われ、「いじめ」「自殺」などの文言はなかったそうだ。
配慮が事実解明の妨げに
「学校現場で子供を犯人視することはできないし、子供たちの今後の生活についても一定の配慮は必要だが、行き過ぎた配慮から一歩踏み込んだ調査ができなければ、これは事実の解明の妨げになってしまう」(NHK記者)
「自殺が起きた日に、担任が駆けつけたりすると、『申し訳ありませんでした』『私が気がつかなかった』と、お詫びされることが多い。ところがあくる日にはころっと変わってしまう。その大きな原因は、担任は責任を取れるが、校長や教育長にも迷惑がかかると。係争になれば、大変な金額の損害賠償も関わってくると、どんどん入れ知恵されると、先生方の口が固くなり、悩みながらも本当のことが言えない。そういう状況に追い詰められてるのが、真相ではないか」(教育評論家の尾木直樹さん)