原価割れで納入を強要、関係ない仕事をただ働き 下請けは泣いている!

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   下請けいじめが急増している。大企業・親会社による買いたたき、支払い延期、業務外の仕事提供強要。中小企業庁が発足させた専門チーム「下請けGメン」に密着すると、「景気回復の中で何が起きているのか」(キャスター役の鎌倉千秋アナ)が浮かんできた。

   公正取引委員会が下請法違反として指導した件数は昨年度(2016年度)、6302件と過去最多に達した。国内労働者の70%が中小企業で働いていることを考えれば、放置できない状態だ。

   下請けGメンは全国に80人。中小2000社から聞き取り調査を行った。

   大手スーパーに卸す豆腐メーカーの場合、自社では98円で売る品がスーパーのプライベートブランドとして30円から48円で売られる。卸値は24円で、原価割れ。スーパーがまず小売値を決め、自分の利益を確保したうえで値引きを要求される。

   「多少の話し合いはできないものか」というGメンに、社長は「それでは取引を終えられてしまう」と語る。生産の80%を卸しているため、取引を止められないという。

   一番困るのは業務外役務の提供だそうだ。関係ない仕事を無償でやれと要求される。書類作り、データの打ち込みで長時間かかることもある。「自社の仕事ができない」「一週間、自社の人間の顔を見なかった」と嘆きがもれる。スーパーの新店舗ができるたびに応援に駆り出されることが日常茶飯事になっている可能性もある。Gメンの松村政忠さんは「根が深い。きわめてクロに近いのではないか」と見る。

   日本チェーンストア協会は「この件は承知していない。取引先との協議は丁寧にと言っている」と話すが、こんな心構えだけでは効果があるかどうか、誰でもわかる。

   長澤哲弥弁護士は「現場の声が当局に上がっていない。書面による調査では本当のことを書けないというためらいがある。Gメンが対面で話を聞くと、実状が伝わる機会になる」

   立教大学の山口義行名誉教授は二つの要因を指摘する。中小企業は仕事量確保のため大量に売る大手に依存しているうえに、プライベートブランドの共同開発などでいったん設備投資した後に価格カットをされると赤字になる。小売業界がチェーン店化しているために他の取引先に売り込むのが難しい事情もある。

   ここまでくると、消費者にも影響が出る。安ければいいとは限らない。

   小売業界はスーパーとドラッグストア、ディスカウントストアの競争激化で、豆腐は客寄せに使われやすい。価格カットの要求に大豆の濃度を落として対応する業者もいる。「昔は13%だった豆乳濃度が今は12・5%。良心で12%は切れない」と話す経営者もいた。最終的には消費者の不利益につながる。

   長澤弁護士は「収益が不当に圧迫されると、本来の品質が維持できません」

   山口名誉教授は「どこでも同じ商品になり、それはネット通販も同じです」

二次下請けにさらに値下げ強制

   愛知県には自動車関係の下請け6000社がある。多くが口を閉ざす中で二次下請け業者の一つが取材に応じた。下請けの下請けだ。

   「以前は良かった親会社との関係が2008年のリーマンショック以降、この10年で様変わりした」と経営者が語る。アベノミクスで大手メーカーや一次下請けが業績を大きく回復させる一方で、二次下請けは今も毎年1%の値下げを強制されているそうだ。

   円安になっても価格改定の話はまったくなく、「仕事を打ち切られるのが怖い」という。600万円の設備投資をして作業を平均5秒短縮することで人件費を10%下げたが、売上げはここ数年減り続けている。社員の給料を抑えてきたものの、それも限界に近い。

   「利益だけを吸い上げられていく。死なない程度にゴハンを残し、余分はいらない。そういうイメージだ」との声ももれる。まるで江戸時代の百姓搾取だ。

   中小企業庁は取引改善を業界団体に要請しているが、自動車メーカーはグローバルな競争を理由に原価低減をさらに強化する構えを崩さない。

   こうして得られたもうけの使途は、海外投資に20・3%、自社社員の賃上げに31・7%、内部留保に25%、下請けとの取引改善は2%(中小企業庁調べ)という。

   長澤哲弥弁護士は「不当な取引を改善しないと、新しい技術も開発できない。イノベーション(技術革新)を親企業と中小が上下関係でなくパートナーとして協力してやらないといけない」と強調するが、どうもほど遠い。

   山口名誉教授は「ちょっと円高になると下請けに値下げ要請という構造にある。中小企業は脱下請けが必要。Gメンだけではだめで、自らいろいろな情報を集める努力がいる」とアドバイスする。そう言われても、わかっちゃいるけど実際には容易ではないと思う企業が大半だろう。机上の理論通りはいかないが、やるしかないことも事実だ。

   グローバル化を逃げに使う大企業の内部にも、公正な取引があってこそ競争力が生まれることを知る人材はいるかもしれない。それでも大企業は自社の業績を優先して突っ走る。海外生産に頼ったコストカット、役員報酬の過大なアップ。景気回復を実感できない人が多数いるのも、こんな側面が随分と響いている。

   「長年、日本企業の間で行われてきた取引の形を変えることができるかが問われています」と鎌倉アナがまとめた。「下請けいじめ社会」にあしたはあるのか。

クローズアップ現代+(2017年7月10日放送「密着!下請けGメン中小企業いじめの深層」)

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