格安航空会社(LCC)のバニラエアが奄美空港で、車椅子の男性客に、自力でタラップを登るよう強いていたことがわかった。男性は関西空港でも一旦「搭乗拒否」されたが、同伴者が運ぶということで奄美入りし、その帰りの便でのこと。同空港に車椅子用のタラップがないためだというのだが......。
ことが起こったのは今月(2017年6月)5日。車椅子の木島英登さん(44)が、同行した知人たちの助けで搭乗しようとしたところ、バニラエアの職員に「規則違反です。危険なのでやめてください」と言われた。同社の社内規定では、タラップでは車椅子ごと運ぶことも、体を抱きかかえることも、禁止されている。
後ろ向きでズリ上がった
木島さんはやむなく、車椅子を降りて17段のタラップを後ろ向きで1段づつ、腕の力でズリ上がった。無論バニラエア職員は手を貸さず、友人も「手伝ってはいけない」と言われ、見守るしかなかったという。
木島さんはその2日前の3日、奄美入りしていたのだが、出発地の関西空港の受付カウンターで、奄美空港には介助型のタラップがないと、写真を見せられて、「上り下りできますか。歩けない人はこの飛行機には乗れないんですよ」といわれていた。
木島さんは、同行者が手助けすると伝えて搭乗。奄美では実際、友人らが車椅子ごと担いで降りていた。ところが5日に「待った」をかけた職員によると、3日の行為も規則違反になるということだ。規則では確かにそうなる。
バニラエアでは、介助が必要な人は、搭乗日の5日前までに知らせるよう、HPに記している。しかし木島さんは連絡をしなかった。いつもそれで通してきたからだという。「事前に連絡すると、体よく断られたりする。面倒なんですよ」というのが、木島さんの経験則だ。
今回の件でバニラエアは、「付き添いの方に支えられて、自力で昇降できればということで、ご案内させていただいた。車椅子ごとというのは想定しておりませんでした」と謝罪した。
「付き添いの支え」もダメとされたはず。でなければ、友人がおんぶしていくこともできた。木島さんは、「困っている人を助ける社会というのは、誰にも回ってくる。(それがないと)生きづらい社会になる」という。