4月スタートの連ドラがそろそろ最終回を迎える。トップを切ったのは「警視庁捜査一課9係」(テレビ朝日系)。3月に亡くなった渡瀬恒彦不在のなかで、全9話、よくがんばったと思う。最後も、係長の存在を思わせ、制作者たちの渡瀬への愛を感じた。
とはいえ、この「9係」や「相棒」など、テレ朝の警察ドラマはシリーズモノが多く、最終回といっても、完璧に終わったわけではなく、いずれ次シーズンをやるからと、こちらの気持ちがどうしても盛り上がりに欠けてしまうのは仕方がない。長年連れ添った夫や妻よりも、期間限定の不倫のほうが盛り上がるのと同じこと(なんのこっちゃ)。
で、今期ドラマの中で、もっとも盛り上がる「最終回」を見せてくれそうなのが、この「小さな巨人」だ。今までにないリアルな警察官の姿を描く、警察エンターテインメイントドラマという触れ込みだが、早い話が、"警察版「半沢直樹」"。長谷川博己演じる警視庁捜査一課の刑事・香坂。いずれは警視庁ノンキャリアの最高峰である捜査一課課長になるべく人物と一目置かれる存在だったが、たったひとつのミスから、所轄へ左遷されながらも、自らが信じる"正義"を貫き、"悪"と対峙するさまが描かれる。警視庁本庁と所轄の対立、警察の暗部など、既視感はあるが、それでも見てしまうのは、俳優たちの顔芸、腹芸入り乱れたクド過ぎるほどクドい芝居。またかと思いつつも、見るとハマってしまう、クセの強~い、パクチーのような作品だ。
体温の高い出演者たち
長谷川の捜査一課時代の部下・山田を演じる岡田将生など、あの「ゆとりですが、なにか」のふにゃふにゃした頼りないゆとりくんと同じ人物とは思えないほどの熱さ。クールなイメージの長谷川しかり。香川照之の熱が伝播したのかと思うほど、男たちはみんな体温が高い。
そんななかで、主人公絶体絶命のピンチ!→万事休す→危機一髪でセーフ→逆転、敵を追い詰める→また逆転、主人公、ピンチ!.........逆転逆転また逆転。延々と繰り返されるストーリー。幾度ピンチが訪れようとも、必ず窮地を脱する主人公はさながら戦隊ヒーローのようだ。
面白いのはゲスト。40年ぶりにドラマ出演するという堀尾正明に、26年ぶりに民放連ドラ出演の和田アキ子ほか、ミュージカル界の貴公子・井上芳雄、ユースケ・サンタマリアに三田佳子に梅沢富美男に高橋英樹、桂文枝に春風亭昇太......と、なかなか濃いメンバーで、スペシャル感満載。
キャッチフレーズ「敵は味方の顔をする」のとおり、味方かと思えば敵、敵かと思えば味方、敵の敵は味方、とまさに目の離せない展開。第10話(11日放送)のラストは、香坂が尊敬する父が賄賂を受け取っていたと知り、慟哭する香坂で終わったが、ここから最終回(18日放送)、どんな決着をつけるのか、これは楽しみ。
演出陣のひとり、渡瀬暁彦は渡瀬恒彦の息子というのはちょっとした豆知識。
(毎週日曜よる9時~)
くろうさぎ