「レイプがどれだけ恐ろしく、その後の人生に大きな影響を与えるか伝えなくてはいけない」。フリージャーナリストの詩織さん(28)が29日(2017年5月)夕、記者会見を開き、元TBS記者から受けた性的暴行を訴えた。
詩織さんは被害届を出し一旦は、準強姦容疑で逮捕状まで出たが、その後の再捜査で不起訴になったいわくつきの事件。番組がトップニュースで伝えた事件の顛末とはさてどうだったのか...
訴えられたのは官邸キャップやワシントン支局長まで勤めたことのある山口敬之・元TBS政治部記者(51)。昨年退社後にジャーナリストとして安倍首相のことを書いた『総理』など著書もあり、コメンテーターとしてテレビ出演したこともある。
二人の出会いは2013年秋。詩織さんがニューヨークの大学にジャーナリズムの勉強で留学中に知人を介し、当時の山口ワシントン支局長と知り合ったという。
性的暴行があったとされるきっかけは、詩織さんが15年3月に「ワシントン支局で働きたい」とメールで就職の相談を持ち掛けたことから。
この申し出に山口支局長はメールで「インターンなら即採用だよ。プロデューサー(有給)でも本気なら真剣に検討します。ぜひ連絡ください。ところでヤボ用で一時帰国することになったんだけど、来週東京にいますか?」と返事をしている。
二人が東京にいた翌4月に、山口支局長が就職相談の続きをしようと食事に誘い、詩織さんも応じた。
場所は、東京・恵比寿の飲食店で、酒を飲んだ後、詩織さんは記憶が無くなってしまったという。翌日意識が戻った時に性的暴行を加えられていたことに気付いた。その時の心境を詩織さんは「はっきり言えることはその時、私の意思に反して性行為が行われていたことです」という。
詩織さんは事実を知るために山口支局長とコンタクトを取り続けたのに対し、山口支局長は4月18日のメールで次のように答えている。
「意識不明のあなたに私が勝手に行為に及んだというのは事実と違います。私がそこそこ酔っていたところへ、あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきてそういうことになってしまった。一方的に非難されるのは全く納得いかない」
結局、詩織さんが警視庁高輪署に被害届を提出したのは、このやり取りから半月近くも経った4月末。高輪署で6月、被害届を受理し捜査の結果、準強姦容疑で逮捕状を取り詩織さんに連絡している。
ところが、逮捕状を執行する段階で警視庁サイドで異変が起きた。逮捕状執行のために複数の捜査員が成田空港で帰国する山口支局長を待ちかまえていた時、警視庁上層部からストップがかかったという。
その時の模様を捜査員が電話で詩織さんに連絡している。「目の前を(山口)容疑者が通過していきましたが、上からの指示があり逮捕することができませんでした。私も捜査を離れます」
書類送検したが不起訴に
結局、警視庁捜査1課が捜査を初めからやり直して昨年7月、東京地検に書類送検した結果、嫌疑不十分で不起訴になった。
逮捕にストップをかけたのは、逮捕状の執行直前に報告を受けた捜査の指揮を執る刑事部長。刑事部長は「高輪署の捜査は女性の証言をなぞっているだけで起訴できるようなものではなかった。自らの判断で逮捕の執行を止めた」と認めている。
詩織さんは「捜査の過程で何らかの意図が働いたのではないか」と不信感を抱き、29日の会見に先立って東京検察審査会に審査を申し立てている。
スタジオでは、コメントのしようがなかったのか、司会の加藤浩次が「今後の審査会の判断が注目されるということです」で終わった。