ヘイト攻撃強まる沖縄 さまざまな考えがあることを知ろう

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   本土復帰から45年たった沖縄でNHKが世論調査を実施したところ、ここ5年で沖縄への誹謗中傷が増えたと感じる人が57%に達した。「このボケ、土人が」「売国奴」など、警察機動隊員から基地建設反対運動の市民に浴びせられた差別発言や、基地の現状を訴えるデモに街角から投げつけられた心ない罵声。こういうヘイト攻撃はどこから来るのか。本土との溝が深まっているのだろうか。

   10年前に沖縄で勤務していたという武田真一キャスターと鎌倉千秋アナが、4月に行った世論調査の結果を伝えた。「本土の人は沖縄の人の気持ちを理解しているか」の質問には、70%が「理解していない」と答えた。

   一方で、安保条約を「重要」と認める人が65%にのぼり、基地を容認するとの答えは44%、否定するのは48%と、拮抗状態に近かった。本土復帰後に生まれた世代では「やむをえない」「どちらかというとやむを得ない」が65%(復帰前世代は42%)あった。

   沖縄県民の多くが基地反対というイメージを、本土側の一部でともすれば抱きがちだが、県民の心情は必ずしも一様ではない。ここらへんにも本土と意識の溝が横たわる。

基地反対と決めつけられた

   沖縄の大学生、仲村颯悟さん(21)は学生14人で去年(2016年)、映画『人形に会える日』を作って公開した。辺野古をモデルにした架空の街で葛藤する若者を描き、「賛成でも反対でもなくモヤモヤしながら新しい解決策を探る姿」を伝えようとしたのだが、思わぬ反響に出くわしたという。

   PRを載せたツイッターに「日本の国防を考えずに」「基地がなくなれば喜ぶのは中国だけだ」の批判が、多い時は1日50件を超すこともあった。内容も観ずに基地反対の映画と決めつけられたのだ。

   仲村さんは「きょうはオスプレイがうるさかったよね、と言っただけで一方的に批判される。これでは沖縄の若者が委縮してしまいます」という。自分と異なる意見はぶったたく誹謗中傷の言動がいま、ナショナリズムを装って横行していることは間違いない。

   沖縄や基地に関するツイッターの投稿中に「反日」「売国」「土人」「偏向」というキーワードをふくむものをNHKが調べ出してみると、基地がニュースになるたびに急増していた。ジャーナリストの津田大介さんは「自民党が強い中で真正面からノーをつきつける人は敵と認識されることがある」という。安易な感情的反発が自民党一強のムードやその政権基盤とも重なりながら、ネット上に広がっていく。

   基地が全面積の30%を占める沖縄県東村の伊集盛久村長には忘れられない体験がある。沖縄の全市町村長が都内でオスプレイ配備反対のデモをしたとき、街の中から「売国奴、売国奴」とリズムをとって罵倒する声があがった。「理解していないなあと正直、怒りを感じた」という。

   村長が去年、オスプレイ発着場容認の決断をすると、今度は「結局はカネなのか」の批判が来た。無理解の誹謗中傷がさまざまな面から殺到する。

   仲村さんは「沖縄にもいろいろな考えがある。僕らの中でも基地容認の人もいる。さまざまなのに、本土に伝わらず、賛成か反対かの二極化されて見られる」と実感を語った。

   世論調査で普天間基地の辺野古への移設には63%が反対だった。津田さんは「前知事が承認した以上、辺野古基地は返還の対象にならない。沖縄の負担が軽減されないことの象徴になっている」と解説する。こうした認識を本土の人がどこまで持っているか、実際に疑わしい。

   『誤解だらけの沖縄基地』という本がある。地方紙の沖縄タイムスが3月、本土側の認識不足にデータを示して反論しようと出版した。

   沖縄の地方紙といえば、2年前、自民党の勉強会に招かれた心有名作家が「沖縄の2紙はつぶさなければいけない」と発言し話題になった。そのうちの1紙だ。石川達也編集局長は「本土に現実が伝わらない。その上にヘイト的な見方やバッシングがある」と危機感を語る。

   たとえば「普天間基地はもともと田んぼの中に建てられた」という誤解。戦前から多くの人が住んでいた場所だ。「基地地主の年収は何千万円もある」との誤解。200万円以下が75%なのだ。

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