バナナに貼り付けられたシールに「GF 33A」とある。この一枚の写真が、「9時間のフライトでバナナ一本」というイメージを伝えて、全日空(ANA)が謝る羽目になったのだが、よくよく調べると、話は全然違った。伝言ゲームとも少し違うネット情報の怖さが......。
イギリスのネットメディア「MailOnline」が伝えた内容は、こうだった。「お腹を空かせた乗客が怒った。9時間のフライトでグルテンフリーの朝食にバナナを渡される」--乗客からの聞き書だった。
便は先月(2017年4月)20日の羽田発シドニー行きANA。イギリスに住む乗客のマーティン・パベルカさん(32)は、小麦粉などから作られるたんぱく質グルテンが食べられない。そこで「グルテンフリー」の食事を注文した。目的地到着2時間前の軽食はサンドイッチだったが、パベルカさんに供されたのは、バナナが一本だけだった。写真の「GF」はグルテンフリー。数字は座席番号だ。
パベルカさんは「周りの乗客も笑っていた」という。この報道に全日空は、「ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。(量が不足との)ご指摘には改善策を検討しております」と謝罪した。
このところ、旅客機では様々なトラブルが伝えられるが、「9時間のフライトにバナナ一本はないよな」と、これはまた新たな話題になった。しかし、「モーニングショー」が取材してみると、話は全然違った。
通常食と2回目も食べていた
ANAはパベルカさんの申告を受けて、グルテンフリーの食事を用意していた。離陸1時間後に出されたのがこれ。ところが、量が足らなかったのか、パベルカさんは、通常食も持ってきてくれと注文。グルテンのないものを選んで食べたという。
そして2回目は着陸前。一般乗客はサンドイッチだったが、パベルカさんには確かにバナナ1本だった。バナナでは足りないと、1食目のメニューの中のメインディッシュだけを持って来てくれと頼み、これを食べた。
野上慎平アナ「つまり、一般客よりもたくさん食べてる」(笑)
司会の羽鳥慎一「バナナだけじゃひどいなと思ったけど、食べてるね。なんでこんなトラブルになっちゃった?」
パベルカさんはあたかもバナナだけであるかのように、メディアに話し、メディアもそう書いた。またパベルカさんが提供したバナナの写真にあったシールは、グルテンフリーを示すために座席に貼ってあったもの。これをバナナに貼り付けて撮ったのだった。ますます印象が悪くなった。
菅野朋子(弁護士)「バナナも事実、9時間のフライトで、も事実。これが誇張されちゃった」
玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「バナナだけだった、とは言ってないの?」
野上「インタビューでは、『バナナだけでてきて、冗談かよ』みたいな発言だった」
青木理(ジャーナリスト)「落とし穴の典型。乗客は事実を言い、フレームアップする。でも、裏を取らないと本当かどうかわからない」
宇賀なつみアナ「どういうつもりで、乗客はしゃべったのか」
質問を送ったが、返事はないそうだ。しかし、バナナは一人歩きする。