麻酔事故は起こりうる
無痛分娩は、背骨の脊髄の外側にある硬膜外腔に針を刺し、カテーテルの管から麻酔剤を注入し局所麻酔を行う作業だが、無痛分娩を支えているのは適切に麻酔を注入する医師の技術だ。
今回、死亡した母親のケースについて産婦人科医は、「麻酔注入時に何かが起き硬膜に何らかの穴が開いたか、カテーテルが膜下腔に入ってしまい、局所麻酔薬が全身に回って呼吸筋が麻酔薬で遮断され呼吸ができなくなったのではないか」とみている。
産婦人科医によると、誤った場所に麻酔を注入する可能性は「誰がやってもありうる」ことで、これが第一のリスク。ただし、厚労省は「無痛分娩による出産が、自然分娩による出産より危険というわけではない。すぐに異変に気付き適切な処置をとれば大事に至らない」という。
問題は、容体の急変に対応できる設備が整っていない病院が少なくないことで、これが第二のリスクだという。厚労省は今月、無痛分娩について「急変時に対応できる態勢を十分整えたうえで実施するよう」医療機関に緊急提言を行った。
いずれにしろ病院や医師の問題だが、富坂医師は「無痛分娩の場合は麻酔という処置が加わるのでリスクはある。麻酔をしたときに一時的に低血圧になることもある」と指摘する。では無痛分娩で急変した時に妊婦はどんなサイン、症状に気を付ける必要があるのか。
カテーテルを入れた際に肘に電気が走るような感覚が下半身に出た場合や麻酔薬投与から2~3分後に足が動かない、呼吸が苦しい、耳鳴り、口の周りの痺れなどを感じたら要注意という。
文
モンブラン