日本が監視対象に
しかも、日本そのものが諜報活動の監視対象になっていた。
2007年に米国で開かれたIWC(国際捕鯨委員会)総会は、商業捕鯨が再開されるかが焦点だった。日本は日本沿岸での小規模捕鯨ができるように改める案を切り札に加盟国に働きかけていた。「ロビー活動などで手ごたえを感じていました」(交渉団の一員だった森下丈二氏)という。
秘密ファイルによると、このとき反捕鯨国は「会場から30キロ離れた米空軍基地に毎朝7時に行く必要があった」という。ファイルは具体的内容までは書いていないが、日本の動きに関する秘密情報をファイブ・アイズの国々で共有していた。ファイルには「秘密にした資料をニュージーランドやオーストラリアの代表に声を出さずに読んでもらって、読み終えるとシュレッダーにかけた」とある。
ジェフリー・パルマ元ニュージーランド首相は「詳しいことは言えないが、とても役に立ったとは言える」と、米国から諜報内容を伝えられていたことを認めた。IWC総会は日本の事前感触とは違って、沿岸捕鯨案は議論も採決もできなかった。
NSA元職員のトーマス・ドレーク氏は「米国の諜報活動に制限はない。他国をスパイし、黄金のような情報を収集する。国家の不正は不正ではないという人もいる」「IWC総会は努力に見合う結果になった。クジラもきっと喜んでいるだろう」とうそぶいた。
池上さんは「驚くべきことで、日本は抗議すべきだった」「日本はいつも米国から情報をもらっているという引け目があって、もの申すことがでない。国会の監視のもとできちんとした情報収集システムを作る必要がある」と指摘した。
今回わかった予算や情報の流れからは、日本が思うほどには米国は扱ってくれず、まるで「劣等同盟国」ともいうような実態が浮かび上がる。日米地位協定の改定やオスプレイの配備再検討なんか、切りだすこともできないはずだ。
武田キャスターは「木曜に第二弾を放送します」と結んだ。スノーデン氏への直接取材やあらゆる人の通信を収集する大量監視プログラムが米国から日本政府に提供された問題に話が及ぶだろう。政府による市民監視となれば、共謀罪法案(テロ等準備罪法案)との関わりもある。中途半端で終わらせてはならない。
*クローズアップ現代+(2017年4月24日放送「アメリカに監視される日本 スノーデン"未公開ファイル"の衝撃」)