米国NSA(国家安全保障局)の秘密未公開ファイルをNHKが入手した。日本に関する内部報告書13通の中には、米国が同盟国の日本を諜報活動の対象にし、情報を他国と共有していたことや、横田基地の通信施設建設や沖縄県内の施設移転経費を日本が出したことなどが記されている。驚きの事実を政府がひた隠しにしていた可能性が高まった。
武田真一キャスター「極秘文書のスクープです」
NHK久々のスクープというだけで終わらせずに、米国が日本をどう扱ったかの実態解明と税金が米軍のために使われた疑惑の追及を、この際、他メディアも野党も進めなければいけない。
「米国は世界中で盗聴や通信傍受を行っている」と告発してロシアへ亡命したエドワード・スノーデン元CIA職員が2013年に暴露した資料には「コレクト・イット・オール」(すべてを収集する)と記述されていた。オバマ政権はいきすぎを認めたが、あの「スノーデンファイル」は秘密資料の一部に過ぎなかった。
NHKはスノーデン氏が調査報道NPOの「インターセプト」に託したファイルの提供を受けて取材を進め、米国、ニュージーランドなど5カ国だけが閲覧できるというトップシークレットを読むことができた。この5カ国「ファイブ・アイズ」に日本は入っておらず、ことあるごとに日米同盟を強調する日本政府は随分と軽く扱われていたことになる。
日本が米国の諜報活動に資金提供
その秘密ファイルには、日本が米国の諜報活動に協力して、資金を出したとしるされている。
2007年、沖縄県内で通信施設を移設するとき、日本から約5億ドルが提供されたという。ファイルには「このミッションは無事、完了した」とある。
米軍横田基地でも最新鋭の通信施設建設費660万ドルの「ほとんどを日本が拠出し、37万5000ドルの人件費まですべて日本政府が支払ってくれた」と書かれていた。さらに「紛争地での諜報活動に使われた」「特筆すべきはアフガニスタンのアルカイダ攻撃を支えたアンテナである」といった記述もあった。
この件についてNHKはNSAに問い合わせたが「一切コメントしない」との回答だった。防衛省は「どのような資料か承知していないため、コメントを差し控えます」としている。
日本が米軍のために使うのは思いやり予算だけではなかったのか。宮下紘・中央大准教授は「すべてのプロセスを明らかにしたうえで民主的な議論が必要」と指摘する。
大韓航空機がソ連上空に侵入したとして撃墜され、日本人28人をふくむ269人が死亡した1983年の大韓航空機撃墜事件では、日本の情報が異例の使われ方をした。ソ連は当初、関与を認めなかった。このとき、実は自衛隊がソ連の通信を傍受していたが、こうした情報入手は公表すると相手国にシステムを変えられるため普通は決してしない。それを日本から提供を受けた米国がソ連非難のために国連でぶちまけた。
米国NSAの元職員、カーク・ウィービー氏は「傍受記録はすしの箱に入れてあり、魚の臭いがしたことを覚えています」と語る。
情報を扱う場合の常識にも信義にも反する行為だった。
池上彰(ジャーナリスト)は「その後、ソ連の情報傍受ができなくなった。情報をどう共有するかはたいへん大きな問題です」という。
田中泉アナ「日本は米国の同盟国の中でサード・パーティというグループに分類され、秘密情報の共有は限定的です」