夢追い人が集まる街、ロサンゼルス。女優を目指すミア(エマ・ストーン)は映画スタジオのカフェで働きながらオーディションを受け続けるも、落ちてばかり。そんなある日、場末のバーでセブ(ライアン・ゴズリング)が弾くピアノの音色に魅せられる。セブはいつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏することを夢見ていた。二人はやがて恋に落ち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのためにやむなく入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違い始める。
先の第89回アカデミー賞では、監督賞、主演女優賞、撮影賞、作曲賞 、歌曲賞、美術賞の6部門を受賞したことでも話題となった。
「夢の国」ハリウッドの愛称
ラ・ラ・ランド(La La Land)という言葉は日本人にはなじみが薄いが、「陶酔して現実離れした状態」「夢の国」という意味があり、アメリカでは俗にロサンゼルス、とくにハリウッドの愛称であるらしい。
そんな夢を叶える場所を舞台とした恋物語は、はっきり言って王道中の王道と言っていいくらいありふれた筋書きで、そこにミュージカルという手法をじつに巧みに取り入れているからこそ、絶妙なバランスで成立している。冒頭の高速道路で皆が車から降りて踊り歌うシーンは背筋がゾクッとするほど最高にクールだし、後半にミアが夢追い人について語るシーンや、ラストにセブのピアノに合わせて二人が仕事の成功以外で叶えたかった「もう一つの夢」が現実と交錯するシーンも歌や音楽で表現するから、すっと観客の琴線に触れる。もしこれを普通の演技だけでやりきったら、間違いなく失敗していただろう。
ハリウッドの業界人に過大評価されたかも
ただ、まだ観ていない人に一つ忠告させてもらうならば、この映画に深く共感できるのは、それこそミュージシャンや俳優、作家など一握りの人しかなれないような職業を一度でも目指したことがある人、もしくは夢に挫折したことがある人というのが条件ということだ。とくに持つべき夢のなかった人や、これから夢を追いかけようとしている若い世代には、この映画で描かれている成功と挫折にいまいちピンとこないだろう。
そして、世間でそんなに夢を追いかけている人がたくさんいるのかと考えると、この映画は少々ハリウッドの業界人に過大評価され過ぎてしまったのではないかと思う。アカデミー賞6部門受賞作品としては、正直、ちょっと物足りない。
おススメ度☆☆☆
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