「チャイナリスク」とは、中国に展開する外国企業が最も警戒する民衆の動きを指す。時に政府も音頭をとるから、目が離せない。その旗振り役になっている国営中央TV(CCTV)の番組が、日本商品を「産地偽装」と批判したのだが、どっこい消費者は、意外な反応を見せた。
「無印良品」の商品を「産地偽装」と告発
CCTVが3月15日(2017年)の「世界消費者権利の日」に合わせた特集で、「シンセン市の市場監督管理当局が発見した」として、中国語ラベルで産地が「日本」とだけ書かれた「無印良品」の商品を取り上げた。「いったい日本のどこで生産されたのか?」と。商品は、飲料やレトルト食品など。
え? 中国製品だって「中国」とだけだろうに、と思うが、実は福島原発事故の後、放射能汚染地域として宮城、福島から新潟、長野、埼玉、東京、千葉までの10都県の産品の輸入を禁止している。
つまり、「日本」だけでは「偽装」の疑いがあると。また、日本語のラベルの印字に「東京都豊島区東池袋」とあるのは、禁止区域ではないかと告発したのだった。
放送翌日には、北京の食品薬品監督管理局が日系スーパーの食品を検査。店側は混乱を避けるため、自主的に商品を撤去していた。番組を見て即座に決断したという。
CCTVは過去にも、「日産の修理費が高すぎる」「ニコンのカメラに欠陥がある」とバッシングの引き金を引いたことがある。政府の政治的意向が入ることはむしろ当たり前なので、その影響力は大きい。現に今進行中の韓国製品ボイコットは、韓国が防衛ミサイルTHAADを導入したからだ。韓国製品がブルドーザーで踏み潰される映像は、2012年の反日暴動を思い出させる。
SNSには日本企業擁護の書き込み
ところが、中国版ツイッター「微博」には、「加油(頑張れ)」「私はこれからも買う」「無印良品を支持します」など、批判を受けた日本企業を擁護する書き込みが並んだ。
一つは、「無印良品」が真っ向から反論したこと。「日本語ラベルにある住所は弊社の法定登録住所であり、商品の原産地ではありません」。なまじ漢字が読めるものだから、本社の住所を産地と取り違えたらしい。また、上海の新聞も、「輸入記録を確認した結果、日本の汚染地域から輸入した商品は見つからなかった」と書いた。
消費者に聞いてみると、「産地は気にしない」「テレビや人の話を鵜呑みにしない」などという。中国事情に詳しい福島香織氏は「政府とメディアへの不満の表れだ」という。「CCTVは中国共産党の代理メディアですから、報道姿勢に『このやろう』と思っていた人は、CCTVの方が不良品だと喜んでる」
そもそも、関東東北10都県の産品輸入禁止自体がお笑いだ。福島原発事故の後、放射能を恐れて中国人観光客が減ったのだったが、その中国人は、かつてのゴビ砂漠での核実験で、北京がどれだけ放射能で汚染されたかを知らないのだから。とはいえ、現実は現実。政府が本気になれば、なんでもできる国だ。それが「チャイナリスク」。
司会の夏目三久「これ、どうご覧になります?」
竹内薫(サイエンス作家)「政治的な番組ですよね。外国企業をバッシングすることで、国内の不平や不満のガス抜きをしようとしている。ただ、消費者は賢くなっていた。もう少し公平、公正な番組を作って欲しい」
そもそも「消費者権利の日」なんて、中国に馴染まないよ。