築地市場の豊洲への移転の経緯を明らかにする東京都議会の百条委員会で昨日(2017年3月20日)、石原慎太郎元知事が証人に立った。石原氏は最終決定の責任は認めたものの、肝心のことでは「部下に任せていた」「記憶にない」と、いまひとつはっきりしない。逆に、移転を止めている小池知事を批判する始末だった。
石原氏は冒頭、「2年前に脳梗塞を患いまして、後遺症に悩んでおります。ひらがなさえ忘れました。記憶を引き出そうとしても思い出せないことが多々ありますので、ご了承願いたい」と断った。体調を考慮し、当初予定の3時間から1時間に短縮。答弁も座ったままになった。
焦点は、元東京ガスの工場跡で、有害物質があるとわかっていながら、なぜ豊洲を選んだのか、移転がどのように決定されたのかだ。これまで、歴代市場長や東京ガスと交渉に当たった濱渦副知事(当時)らが証言しているが、依然責任も過程もはっきりしない。
「交渉は濱渦氏に一任」「詳細は記憶ございません」
1999年に石原氏が東京ガスの社長と交渉したという証言については、「濱渦氏に一任していたので、詳細に報告は受けておりません」
石原氏はこれまで、豊洲への移転は「青島知事の時代からの既定路線だった」としていたが、元市場長が「知事の誤解」「石原氏が決断」と答えていた。これについて石原氏は、「(青島氏からの)引き継ぎ事項の文書の中に、豊洲地域に市場を移転するとあった」と答えた。
土壌汚染対策で、東京ガスの負担を78億円と決め、以後の負担は負わないとした協定(瑕疵担保責任の破棄)について、元市場長は「それがないとまとまらない。80億円と知事に説明した」と言っていた。これに石原氏は、「担当者に一任していた。詳細は記憶がございません」
土地売買契約は事前に報告を受けていたか?「覚えておりません」。市場長は説明したと言っている。「ですから、何なんですか?」。記憶にないと? 「記憶にないものはない。それで私は何をすべきだったとおっしゃるんですか?」
さらに高濃度の地下水汚染が判明
それよりも石原氏は、小池知事の豊洲移転の延期に熱くなった。「議会にも計らずに、議会軽視の最たるものだ。彼女の不作為の責任が問われるべきだ」と厳しく批判した。「不作為」じゃなくて、「作為」では?
築地市場関係者は、「責任ははっきりしない。直ちに豊洲へ行け、という人がいるが、見当違いだ」「知事時代の責任を果たしているのか」「みんな本当のことを言ってるんだと思う。ただ、記憶が違ったり......」と受け取りは様々。
批判された小池知事は、「先の記者会見の内容をあまり出ていなかった。(移転については)総合的に判断」とだけだった。
その豊洲では、さらに高濃度の地下水の汚染がわかって、さらに移転の先行きが読めなくなった。
司会の夏目三久「新しいことは特に出てこなかった?」
龍崎孝(流通経済大学教授)は「なぜ土壌汚染の土地を買ったのか、誰が決断したのか、肝心のところが明らかにはならなかった。現時点ではこれ以上の真相究明は難しい」。さらに「小池知事は都議選の争点にするという意向も見せているが、政治と安心・安全とは別、豊洲移転を政治的な道具にしてはならない。決断の時だ」という。
濱渦氏、都職員作成の文書に激怒
百条委での証言の焦眉は、19日の濱渦氏だった。交渉過程で「知事が安全宣言をして云々」という政治的な発言をしたという文書を都が作っていたことに、濱渦氏が色をなして「全く知らない」「けしからん」と怒った場面。都の職員が何かをやった。「伏魔殿」の入り口が見えた感があったのだが、誰も突っ込まなかった。追及したら都合が悪いのかな?