小さな歯が3本見つかった
3週間後の昨年12月、遺品らしいものが見つかったと連絡があった。ミッキーマウスのついたマフラーに、人の骨らしいものがくるまっていた。木村さんは覚えがなかったが、舞雪さんが「マフラーはお揃いでもってたんだよ」と言った。
DNA鑑定で汐凪ちゃんと確認された。
見つかったのは、砂にまみれた小さな歯が3本だけ。舞雪さんは「ホッとした」といった。が、木村さんは「会えたという気持ちになれない。実感がわかなかった」という。気持ちも晴れなかった。
長野に捜索の仲間たちが集まって、今後どうするかを話し合った。ここで木村さんは改めて、探すことが自らの力になっていたのではないか、と気づかされた。「時間がかかったことで、つながった縁がある」。木村さんは今も、大熊町へ通い続け、仲間たちも手伝って、大規模調査で出た土をふるいにかけている。
木村さんは、「汐凪におちょくられているような。そう思えるようになった。今までと違う」という。
作家の天童荒太さんは、遺品を探すダイバーの物語を小説にした。木村さんの6年を、「人間として大切な仕事をしていると思う。子供に会いたいのと同時に、どうして守れなかったのか、という後ろめたさ、罪悪感を持っている。それが愛の証、祈りの声だと思う」という。
木村さんたちが、金網の上に乗せた土の塊を押し潰し、小さな骨のかけらを探す様を見ていると、まるで賽の河原の石積みのようだ。木村さんは今ようやく、「汐凪は、笑っているだろうな」と言えるようになった。6年という歳月が必要だった。
*クローズアップ現代+(2017年3月9日放送「震災6年 汐凪(ゆうな)を捜して~津波と原発事故 ある被災者の6年~」