厚生労働省が働き盛りでも発症する若年性認知症の全国調査に乗り出した。
64歳以下の人が発症する若年性認知症患者は現在3万8000人いると推定されている。しかし調査したのは10年前で実態はほとんどわかっていない。このため高齢者の認知症に比べ遅れがちな支援策を検討する資料にしたいと、6000万円の予算で3年がかりの大掛かりな調査に踏み切った。
そこで番組「医療プロジェクト」のコーナーでも、知恵と工夫で変わる最新の若年認知症の治療現場を取材し伝えた。
神奈川県内に住む2人暮らしの母娘。50代で若年性認知症を発症した母親(68)をフリーアナウンサーの娘さん(33)が介護して10年になる。物忘れが激しくなった母親の自立にと考えたのが付箋の活用だった。ラジオの操作の仕方やタンスの入った衣類の中身など細かく付箋に書いて、忘れても困らないように工夫した。ホワイトボードを用意し、薬を飲む時間なども示した。
現在、難しい言葉は理解できなくなったが、簡単な言葉はわかるという。なにより表情が明るく元気だ。
番組にゲスト出演した医療ジャーナリストの伊藤隼也さんによると、「認知症は、今できることを継続させる工夫が重要で、付箋の活用はいろいろなことができるようになるので非常に大切なことだ」という。
カラフルな食器も有効
認知症患者は食事を摂らなくなると言われているが、そうした患者のために今、カラフルな食器が注目されている。例えば皿の内側は青、外側は赤の目立つ色で、皿の底に傾斜をつけスプーンで掬いやすくするなどの工夫がされている。
また最近の研究では、認知症の進行を抑える有効な手段として「社会交流」が挙げられている。
メモリークリニック御茶ノ水の朝田隆院長は付箋の活用を提唱すると同時に「人間には社会生活に特化した神経細胞があると言われていて、その重要性が指摘されている。認知症予防の中でも、従来言われてなかった社会交流、知的刺激への注目が必要です」と強調する。