コミック作家のクレイ(ジョン・キューザック)は、別居中の妻と息子にボストンの空港から電話をかけていたが通話の途中で携帯電話のバッテリーがなくなり、電話が切れてしまう。すると、突然、空港内で携帯電話を使用していた人々が次々と暴れ出し、周囲を襲い、空港はパニック状態に陥る。
命からがら地下鉄へと逃げ込んだクレイは、車掌のトム(サミュエル・L・ジャクソン)らの協力を得て、暴徒化した人々の攻撃から身を守りながら、妻子が住むニューハンプシャーを目指していく。
監督は『パラノーマル・アクビティ2』のトッド・ウィリアムズ。
原作は2006年に発表された「ホラーの帝王」スティーブン・キングによる同名小説で、多くの読者から結末に不満が寄せられた。そこでキングは今回の映画化にあたり、自らが結末を修正し、脚本家として挑んでいる。この珍しい製作体制は原作を知る者にとっては、楽しみな要素だろう。
コミュニケーションの喪失が執筆の動機
全世界で携帯電話の普及率は約60億人といわれており、誰もが当たり前のように使用しているが、キングは携帯電話の普及によるコミュニケーションの喪失に警報を鳴らし、執筆をしたと言われている。
プロットはゾンビ映画の体裁を纏っているが、あくまで携帯電話をきっかけに暴徒化した「人間」が、夜になると思考が停止してしまうというのが本作の肝になっている。あえてチープなCG処理をしていたり、B級感を演出しつつ、「懐かしさ」を漂わせている映像表現は、暗中模索をしながら、愛する妻子の元へ向かうという目的のみで行動するクレイの姿と妙な一致を果たしている。
キング自身が再考した結末部分には触れられないが、キングが原作を執筆した2006年と、トランプ大統領が誕生した今現在の変化に、他の誰でもなく、キング自身が最も驚いているのかもしれない。
アナログ対デジタルという構造の二元論は用いず、本作は、現実で起きていることとフィクションの境界線の上で創作を楽しんでいるようだ。
ウィリアムズ監督は「観客がこの映画について議論するだろう。皮肉にもツイッターやフェイスブックを使ってね」と語っている。
丸輪 太郎
おススメ度 ☆☆☆