宅配制度を守るため消費者がすべきことは?
ところで、私はアマゾンのヘビーユーザーだ。本やコピー用紙はもちろんのことコーヒーや果物、ティッシュやトイレットペーパーまでアマゾンから買っている。
なぜか? 歩いてすぐのところにコンビニがある。駅の近くにはスーパーが2つある。そこで買えばいいのだが荷物になるし、トイレットペーパーなどは持ち歩きたくない。それに早く頼めばその日のうちに配達してくれるし、コンビニより安いのだ。
その他にも、アマゾンミュージックやビデオ、小説などを読み上げてくれるAudibleなど、アマゾンがなくては夜も日も明けない状態である。だがこうした便利な配達も、物流がなければ成り立たない。
現代は、アマゾンだけではなく、セブンイレブンなども個人宅への配送を手がけようとしているが、物流のヤマト運輸や佐川急便が、ここから撤退したら完全に成り立たなくなると警鐘を鳴らしている。
アマゾンの配送を請け負っている運送会社社員は、繁忙期になると1日に300軒を回ることはざらで、しかも、時間指定の商品が多く、常に時間に追われているからストレスは尋常ではないという。
その上、仕事が忙しければ賃金が増えるのが常識だが、物流業界では労働時間が長くなっているのに、給与が下がるという「異常」な状態におかれているというのだ。
厚労省の調べだと、道路貨物運送業の給与は99年をピークに減少している。それに労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間なのに、中小小型トラックドライバーは2580時間と長く、単純に時給に換算すると約1500円と、コンビニの深夜バイトと変わらないという。
よくいわれるように、アマゾンの荷物1個の配送単価は何十円と低く抑えられている。
それに私もよく思うのだが、アマゾンは何を頼んでも箱で持ってくるため(日本郵便は封筒)、郵便受けに入らない。そこで個々の部屋まで持ってくるのだが、出かけていれば再配達ということになる。本や小物などは郵便受けに入れてもらえば、それですむのだが、どうしてそうしないのだろう。
多いときは日に何度も宅急便が扉を叩き、煩わしいこともある。
ドローンで家の前まで届ける実験をやっているそうだが、まだまだ実用化は先のことであろう。
アマゾンは、プライム会員になれば配送料無料で、文庫本一冊でも届けてくれる。そのために町の書店は次々に潰れていく。出版社も、書店としての存在感を圧倒的にしたアマゾンにはなかなかモノをいえない。
だが、週刊現代のいうように「消費者は物流にコストを支払おうという意識が低すぎる」のはたしかだ。「物流は社会の命綱」といわれるそうだが、モノがあっても運ぶ人がいなくては何もならない。
われわれ消費者もそうだが、アマゾンなども、日本で生き残りたいのなら、物流に対する殿様商売を改めなくてはならないはずである。
あまりの安さと時間の指定にアマゾンと取引をやめた佐川急便、それにヤマト運輸、日本郵便が一致団結して、アマゾン支配を打ち破るべく交渉を始めれば、アマゾン側とて譲らざるを得まい。
2月23日のasahi.comがこう報じている。
「ヤマト運輸が、荷物の扱い量の抑制を検討する見通しになった。今春闘で労働組合から初めて要求があったためで、インターネット通販の普及と人手不足でドライバーなどの労働環境が厳しくなっていることから、労使で改善を模索する。配達時間帯指定サービスなどの見直しにつながる可能性もある」
消費者にとっては宅配料が値上げになるが、致し方ない。そう考えないと、いくらアマゾンに本を頼んでも、いつまでたっても届かないということになるかもしれない。