北朝鮮の指導者、金正恩・党委員長の異母兄で、故金正日氏の長男、正男氏がクアラルンプール空港で暗殺された。昨日(2017年2月14日)夜の韓国メディアが一斉に報じた。正男氏は、北の工作員とみられる女性2人に、毒針で刺された、あるいは液体をかけられた、と伝えられるが、詳細は明らかでない。
報道によると、正男氏は13日午前10時発のマカオ行きの便に、キム・チョルという名前で搭乗予定だったが、出国審査の前の段階で、近づいてきた2人の女性に襲われたらしい。北の工作員がよく使う毒針の可能性が高いが、空港の診療所に駆け込んだ正男氏は、「顔を何かで拭かれた」とも言っているという。
正男氏は空港から救急車で病院に搬送される途中、死亡した。マレーシア警察は、正男氏の死亡を確認したが、死因は不明としている。女2人は、タクシーで逃走したとみられ、警察が捜査している。
正男氏といえば、2001年に家族を伴って偽パスポート(ドミニカ共和国)で成田から入国しようとしたが、身柄を拘束された。小泉政権は、身元を特定せず国外退去にしている。正男氏はマカオや北京などで、事実上中国の庇護下にあったとみられる。
「三代世襲には反対」と発言、目の上のたんこぶだった
しかし、金正恩氏が権力の座に着いた2012年からは、「場所、手段を選ばず金正男を除去せよ」という指令が出て、在中国の工作員には毒針が支給されたという情報もある。一方で、北の政府は正男氏の資金源を断った上で、息子と一緒に本国に戻れと召喚命令が出ていたが、正男氏は従わなかったとも。
正男氏は以前から、「私はただの自由人。金正日の息子ではあるが、北朝鮮の政治的ポジションにはいない」と言っていた。また、三代世襲には反対とか、北は開国しろ、などとも発言。最近は韓国への亡命を試みているとも言われていた。北がそれを阻止したとも読める。
コリア・リポートの辺真一氏は、「金正恩にとっては、目の上のたんこぶ。勝手なことを言いまくっていたから、とうとうやられたかというのが、正直な感想」と、まあにべもない。
北では、2013年の張成沢など粛清が続いており、この張氏との関係で、正男氏は中国にとってのカードになりえたのだが、今では「失われたカード」ともいわれる。