韓国・プサンの日本総領事館前に先月(2016年12月)、設置された慰安婦問題を象徴する少女像をめぐり、韓国が過熱している。
約1年前、元慰安婦の支援事業のために10億円を拠出し、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決するなどとした日韓合意が成立。その際、ソウルの日本大使館の前に民間団体が設置した少女像について「適切に解決されるよう努力する」としていたが、プサンにもあらたに少女像が置かれたという。
これを受けて、日本政府は駐韓大使を帰国させるなどの対抗措置を取った。韓国政府は「外国公館の前に造形物を設置するのは、国際関係や儀礼上、望ましくない」(ユン・ビョンセ外相)などとしながら、対応に苦慮しているという。
プサンの少女像は先月28日、学生グループが設置した。公道に像を設置することは違法だとして、地元の自治体がいったん撤去したそうだ。ところが、この件がメディアで伝えられると、韓国中から自治体に抗議が殺到。2日後に少女像がふたたび設置されて以降、撤去していないという。
「日韓合意に成果があったとは思えません。被害者は日本政府にカネや慰めを求めているのではなく、この問題の事実を歴史的、法的に認めることを求めています」(少女像を設置した学生グループの中心メンバーのマ・ヒジンさん)
元慰安婦と家族は撤去望む
一方、今回、NHKが取材した元慰安婦や家族のなかには、日韓合意のおカネを受け取って終わりにしたい、少女像は撤去してほしいなどと話す人もいたという。
「合意の履行はどうなっていくんでしょうか」(鎌倉千秋キャスター)
「残念ですけど、見通しは明るくないと言わざるをえないです。パク・クネ大統領のスキャンダルが弾けて、大統領選挙がいつあるか、わからないという状況になった。有力候補と言われる人たちは、すぐに戦っても勝てるように、いまからフルスロットルで行かざるをえない。(日韓合意を成立させた)パク・クネさんを否定して、自分は国民の側に立っていると、強くアピールする。そのためには国民感情に響きやすい主張に走りがちになってしまう」(韓国政治が専門だという奥薗秀樹・静岡県立大学准教授)
「どうしたら、この同意を進めていけるのか」(鎌倉)
「(状況は)非常に厳しいですけど、この対立が続き、問題が事実上、放置されて、慰安婦の方々が亡くなってしまうというようなことは、当事者不在の最悪のシナリオで、避けるべきだと思います。そのためには、日本側は冷静さを取り戻して、合意を前提に何ができるのか。もう一度、当事者に寄りそう原点を忘れずに考えてみる必要があると思います」(奥薗)