「あるひ もりのなか くまさんに であった」――誰もが知っている「森のくまさん」の歌。これをネタにパロディの歌詞をつけてヒットしていたお笑い芸人のパーマ大佐(23)に思わぬつまづきがあった。翻訳者が、改ざんまかりならぬとCD、DVDの販売中止を要求したのだ。あれって、作者不明のアメリカ民謡じゃなかった?
パーマ大佐はウクレレをかき鳴らして、正規の歌詞の合間に、かなり長いセリフを加えたのが大受け。めでたくCDとDVDになって、これを日本音楽著作権協会(JASRAC)が翻訳者の馬場祥弘さん(72)に送ったところ、著作権者の権利を侵害されたと馬場さんが激怒したというのだ。
パーマ大佐は、元の歌詞にある「熊さんにであった」と次の「お嬢さんお逃げなさい」の間に、「ひとりぼっちの私を 強く抱きしめた熊」とか、「人に言えない過去がある」とか「なぜ逃げるのか」も勝手に付け加えて、「スタコラサッサ」で大笑いという手法。
誰でも知っている歌詞だからこそ、違うセリフが意味を持つ。インターネットで公開されるや一気に爆発。テレビ番組にも出て、とうとう12月にはCD発売となった。馬場さんはこれに待ったをかけたわけだ。
もとはアメリカ民謡
そもそもこの歌は、1972年のNHK「みんなのうた」で紹介されたのが最初。編曲者の玉木宏樹氏の著書によると、当初は日本語の作詞者がわからず、作詞・作曲不明のアメリカ民謡となっていた。数年後、馬場さんが自分の作詞作曲だと申し立て認められた。しかしその後、原曲の楽譜が発見されてアメリカ民謡と分かったため、馬場さんは翻訳者となって著作権が認められている。
馬場さんは歌詞を許可なしに改変されたとして、著作者の人格権を侵害されたという訴えだ。CDの販売停止やネット上の動画の停止と慰謝料300万円をパーマ大佐とCDの発売元に求めている。損害賠償の請求もありうるとしている。ただ、これがなかなか微妙。パーマ大佐は、付け加えてはいるものの改変はしていないからだ。
これで思い出すのが、森進一さんの「おふくろさん」をめぐる作詞家川内康範さんとの争いだ。森さんが舞台で曲の冒頭にセリフを加えたことに川内氏が激怒して「歌わせない」と宣言。川内さんが亡くなった後、家族の了解を得て、ようやく森さんは歌えるようになった。