先週土曜日(2017年1月14日)朝7時すぎ、埼玉県のJR京浜東北線・蕨駅ホームで盲導犬を連れて歩いていた全盲の男性(63)が、入ってきた電車に接触して線路に転落、死亡した。盲導犬はホームに残されていた。事故は防げたのか。番組では視覚障害のある二人に話を聞いた。
日本盲人会連合の藤井貢さんは、ホームから転落したことがあるという。「自分では自信を持って歩いていて、気がついたらホームの端に立っていたということが時々、今でもあります」という。慣れていると油断が出るというのだ。今回男性も、毎日の通勤の途中だった。
また、盲導犬を使っている荒川明宏さんは、「常に犬を左に、かつ犬は線路側を歩かせないといけない。大回りになっても」という。今回事故では、男性が線路側を歩いていて、電車に接触している。
男性は階段を降りてきて、階段脇の狭い部分(幅約2メートル)を通っていた。盲導犬は男性の左側で、やや後方を歩いており、右が線路。男性は自ら先導しながらホームの端を踏み外したところを、電車と接触したとみられる。男性は病院で5時間後に死亡した。
通い慣れた通勤路で起きた事故 盲導犬、万能でない
男性は自宅のある蕨駅から経営しているマッサージ店のある隣の西川口駅へ向かう途中だった。駅員によると数年前から蕨駅を利用しており、いわば毎朝通う慣れた道だったということ。国交相によると、視覚障害のある人がホームから転落する事故は、毎年70~90件ある。慣れていても起こるものなのか。
前出の藤井さんが転落したホームは慣れた場所だった。杖を使っているが、トイレに行き、元の場所に戻ったつもりが、ホームの端に来ていた。幸い電車が来ず、肋骨骨折で済んだという。「転落は、初めて、あるいは知らない駅よりも、よく知っている駅の方が可能性が高い」
荒川さんは、「ホームの場合はいろんな障害物がある。犬は万能じゃないし間違えることもある。普段と違うことをやると思わぬことになる」という。今回の事故で抱いた違和感は、人間がホーム側を歩いていたこと、犬が後を付いていたこと。どちらもセオリーからはずれていた。
ホームドア設置進むが、声かけよう
昨年(2016年)8月、東京メトロ銀座線・青山一丁目駅で、盲導犬を連れた男性が転落、電車に轢かれ死亡した。階段の脇の狭いところで転落していた。この後、国交省と鉄道会社は、利用者が日に10万人以上でホームドア整備可能な駅では、2020年までにホームドアを設置するとのガイドラインを作った。
ガイドラインには蕨駅も含まれている。また、ホームドアがない駅では、原則駅員が目の不自由な人に声をかけたりすると、決められていた。しかし、今回男性が改札を通るのを駅員が確認していたが、声をかけなかった。JR東日本は、「これまで男性に付き添いを求められたことはなく、限られた要員で対応できなかった」と言っている。
ウェンツ瑛士「ホームドアが一番だけど、僕らも声をかけることじゃないかな。どう声をかけたらいいのか、考える必要がある」。まさにそれがポイントだ。
文 ヤンヤン