2年前、「人を殺してみたかった」という動機で、77歳の女性を殺害した元女子大生の初公判が昨日(2017年1月16日)、名古屋地裁で開かれた。犯行時19歳だった被告は今、21歳。殺人のほか、殺人未遂、放火など起訴された7つの罪は、いずれも尋常でない。その精神状態をめぐって、検察、弁護双方がぶつかる。
事件が起きたのは、2014年12月7日。名古屋市の自宅アパートで、訪ねてきた森外茂子さん(当時77)の頭部を斧で数回殴り、マフラーで首を絞めて殺した。その後、仙台市の実家に帰省していたが、そこでも放火未遂を起こしており、15年1月27日逮捕された。
その供述に驚いた。「子供の頃から人を殺してみたいと思っていた。誰でもよかった」と言ったのだ。森さんを殺害した当日のブログには、「やった」と書いていた。殺害前には、「『殺したい』人はいないけど、『殺してみたい』人は沢山いる。日常を失わずに殺人を楽しめることが理想なんだと思う」(2014年9 月)と書いていた。
大学の同級生たちも驚いた。明るく、活発で、普通に面白い子だった。ジャージ、ジーパン、男っぽい。スカートは見ない。髪も短い。そんな子がなぜ?
高校時代、同級生にタリウム飲ませ、殺人未遂でも起訴
部屋からは複数の薬品が押収された。この追求から、驚くべきことが出てきた。「高校生の頃、同級生に毒を盛った。タリウムを飲ませて観察したかった」と言ったのだ。
硫酸タリウムは、ネズミの駆除などに使われる劇物。被害に遭った男子生徒は、視力低下などの後遺症が残った。検察はこれを殺人未遂で起訴。他にも、仙台市で住宅に放火(火炎瓶)、放火未遂を起こしており、計7つの罪で起訴されていた。
問われているのは、責任能力。3つあって、まず通常の責任能力ありなら有罪。限定責任能力(心神耗弱)は善悪の判断能力が著しく減退している状態で、有罪だが減刑になる。責任無能力(心神喪失)はそれが失われている状態で、無罪となる。
責任能力あった見方、有力
被告は、名古屋大に通っていて普通の生活をしていたこと、犯行には計画性も感じられることから、菊地幸夫弁護士は、責任無能力(無罪)にはならないのではないかと見る。
ロバート・キャンベル「日々の学生生活はどうか。森さんは(高齢だから)奪われる未来が少ないと考えて、彼女を殺すことにしたと、非常に浅はかだが、計画性、論理性はある。双極性障害と言ってる。世界に6,000万人いるとされるが、責任能力がないとは言えない」
加藤浩次「殺人は認めているが、タリウムの購入(殺人未遂)などは否定している」
キャンベル「勉強もでき、安定した家庭なのにどうして。殺害した後、写真を撮ったり、人間として欠落を持ったものが、通用してきたのか、考えないといけ ない」
判決は3月末に予定されている。