ベストセラー出しても出世しない講談社
これ一冊手がけただけでも「将来の役員候補」間違いないと思われるかもしれないが(そう報じたメディアは多い)、残念ながら講談社という会社は、ベストセラーを出した編集者は不思議と出世しないのだ。
『窓ぎわのトットちゃん』を出した女性編集者は、定年間際に校閲へ異動になった。乙武洋匡の『五体不満足』を手がけた編集者も大出世はしていない。
百田尚樹の『海賊とよばれた男』を出した編集者も局長まで行かず、先日定年を迎えた。
講談社にマンガ出身の役員はいるが、多くは営業や販売出身で、オーナー会社だからトップにはなれないがナンバー2には、この中から選ばれることが多い。編集上がりをあまり重用しない不思議な会社である。
ベストセラーを出すと廊下をふんぞり返って歩くようになる編集者がいるが、朴容疑者はそうではなかったようだ。「後輩のちょっとした悩みも邪険にしませんし、若手編集者の目標です」(講談社関係者=週刊文春)。人格的にも優れていたようだ。
奥さんと知り合ったのは10年以上前で、同期が開いた合コンでだったという。
結婚して2人は社宅に住み2011年に今の千駄木に一戸建てを建てたというから、私生活も順調だったようだ。
07年に長女が生まれると次々に4人の子宝に恵まれている。彼は次女が誕生の後、ツイッターで「僕は3回しかエッチをしていません」と呟いたそうだが、近所の人によると夫婦仲もよく、声を荒げることもなかったという。
次女誕生後に、講談社の男性社員としては初めて約2カ月の育児休暇を取ったそうだ。
彼が朝日新聞で連載していたコラム(12年7月18日付)にこう書いている。
「なぜ今も昔も、現実でも漫画の中でも、子どもは『お母さん』が好きなのか、分かった気がします。そりゃそうだ、あんなに大変なんだもん。子どもたちはじっとそれを見ている。じっとお母さんを愛している」
これほど妻の苦労を思い、子どもたちを愛している男が、なぜ妻殺しで逮捕されてしまったのか、私なりに考えてみたい。