「ベビーカーご利用自粛のお願い」。初詣で賑わう東京都内の寺の門前に立てられたこの看板をめぐってネット上でベビーカー論争に発展した。ところが真相は初もうでの順番待ちをめぐる別のところにあったという話題を取り上げた。
問題の看板があったのは、「東京大仏」で知られた板橋区内の乗蓮寺。門前に12月31日(2016年)~1月3日(2017年)まで立てられた看板には大文字で「ベビーカーご利用自粛のお願い」の脇に「年末年始には境内混雑のためご入門をお断わりする場合がございます」とあった。
初詣に訪れた男性がこの看板に違和感を持ち、ネットに次のような投稿をした。「何の落ち度もない単に小さい子供を連れたままサンガ初詣に来て、これを見て嫌な気持になると想像できないんだろうか」。
この意見にネット上では賛否両論の投稿が寄せられ大論争となった。「『自粛』って言葉はかなり強い表現だからベビーカー持ち遠慮しろよ!って言っているようなもん」「ぜんぜんいやな気持になりません。むしろトラブル回避のために当然だよなー」。
論争のきっかけを作った男性は、ネットへの投稿だけでは収まらず直接、寺に長文の手紙を書いた。要約すると「実質ベビーカーを排除する方法が宗教施設として最善なのでしょうか......社会の空気は『ある』ものではなくて『作る』ものだということを念頭に、今一度あの立て看板は本当に最善の策なのか考えていただければと思います」。
もともとはベビーカー優先だった寺
この手紙に対し寺側が過去にあったある事情を手紙で打ち明けた。それによると、2年前までベビーカーの初詣客のためにスロープのある南門からガードマンの誘導で優先的に入れていたという。
ところが明らかにベビーカーを必要としない小学校中高学年と見えるような子どもたちがベビーカーに乗り寺内に入り込み、長時間並んでいた客と「ズルだ」「割り込みだ」と口論に発展したという。
寺側は「最善の策でないことはわかっていましたが、ともかく事故がないことが第一なので...」とベビーカー自粛の看板を掛けたという。
問題はやはり寺側にありそうだ。なぜベビーカー自粛の看板を立てる前に、せっかくベビーカー優先の配慮をしたのだから、『ベビーカーを悪用した割り込み禁止』の看板を立てるなり、ガードマンによる割り込み禁止の指導を取らなかったのか、本末転倒になってしまった。
作家の吉永みち子も「ここで責められるべきは、ベビーカーを悪用して自分だけズルしている人たち。本来これがターゲットでなければならないのに、ベビーカーとお寺のバトルという形で伝えられていしまった。これでは間違った方向にもっていってしまう」と指摘した。