「雑低書高」時代の週刊誌に元気はあるのか? 年明け巻頭特集は静かな幕開け

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   週刊文春が昨年(2016年)暮れの28日発売(合併号)ということもあるが、年明けの週刊誌の船出は比較的静かである。

   去年、41年ぶりに雑誌の売り上げを書籍が上回った。雑誌の売り上げは前年比7・7%減の約7200億円。書籍は前年比1・6%減の約7300億円だった。

   週刊文春が華々しいスクープの連続で話題を集めたが、漫画誌などの落ち込みで、これまで出版界の常識だった「雑高書低」の流れが変わってしまった。そんな雑誌の元気のなさが、新年の週刊誌にも出ているとしたら、心配である。

   各誌の巻頭特集から見てみよう。週刊文春は「小池百合子のブラックボックス」。小池都知事と同居している20歳年下の男がいると、思わせぶりなタイトルを打っているが、何のことはない。小池曰く、「私の母の兄の奥さんの妹の子ども」だというのだ。巻頭でやる話かね。

週刊新潮は「トランプ占い」   米中接近説も

   週刊新潮は「日本が頭を抱える4つの最悪シナリオ2017」。20日(2017年1月)に大統領に就任するトランプが、世界を揺るがす暴れん坊になるのか、現実的な対応をとって世界各国は胸をなで下ろすことになるのか、「トランプ占い」を最初にもってきている。

   とりわけ選挙中から毒舌を吐いてきた米中関係が注目される。12月始めに台湾の蔡総統と電話会談したことで、「一つの中国」に固執する習近平は怒り心頭だからだ。

   だが、京大名誉教授の中西輝政は、同じ頃トランプが師と仰いでいるキッシンジャーが習と会っていることに注目すべきだという。

   中西は、ニクソンもレーガンも大統領に就任したら対中宥和路線に転換している。共和党政権で繰り返されてきたことだから、安倍首相が、「『米国の後ろ盾があるのだから』と、対中強硬の前のめり姿勢を取ってしまうと、トランプに梯子を外され、日本が孤立する恐れがある」と警告する。

都議会「小池」勢力が過半数超えも

   次に小池都知事が今夏の都議選に小池新党を立ち上げるとぶち上げたが、20議席ぐらい獲得する可能性があり、小池に擦り寄る公明党、民進党、小池シンパの党を加えると「過半数の64議席を超える可能性は非常に高い」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫)そうだ。

   だがそうなると、大風呂敷を広げることはできても畳むことができない小池に、移転を延ばされた築地の仲卸業者がゴネて、豊洲市場の使用料の値下げを要求することもあり得るという。

   これまでは都議会自民党が間に入っていたが、これからはそうはいかない。結果、補助金という都民の税金がムダに投入されることになりかねないというのだ。

   たしかに「口だけ番長」の小池に、都民の目も厳しくなってきてはいる。だが、今のような自民党のボスたちが勝手気ままなことをやり、都政を蹂躙してきたことに対する都民の怒りは大きいから、このままいけば自民党は惨敗するに違いない。

   小池の真価は、その後どうするかで決まるはずである。もう少し見極める必要があると思う。

小池都知事の外国人脈に光当てた「ニューズウィーク」

   小池に関しては、ニューズウィーク日本版が興味深いレポートをやっている。トルコでは年末から年始にかけてテロが頻発しているが、なかでも、12月19日に起きた警官によるロシアのトルコ大使射殺事件は世界に大きな衝撃を与えた。

   この容疑者は現場で射殺されたが、エルドアン大統領はこの容疑者を「フェトフッラー(フェト)」というテロ組織の人間だと断言した。

   この組織と日本の元小泉総理の秘書で現在は内閣官房参与の飯島勲、小池が親しいというのである。

   詳しくはニューズを読んでほしいが、かいつまんでいうとこうなる。フェトはイスラム教指導者ギュレン師を信奉し、「ギュレン運動」と呼ばれる大きな影響力を持つ組織のことである。

   エルドアンとギュレンとの確執の始まりは16年の7月に起こったクーデター未遂事件だった。この事件の背後に尊師と崇められるギュレンがいると見たエルドアンは、徹底的な粛正を続けている。

   現在、ギュレンは病気療養を理由にアメリカで暮らしているが、潤沢な資金を背景にクリントン夫妻に取り入り、16年の大統領選ではクリントン陣営に200万ドル近くの献金がわたっているという。

   徹底的な秘密主義を貫く秘密結社のようなギュレンの組織は現在、「世界約170カ国に約3000の団体を持ち、国や地域ごとに『イマーム』と呼ばれる指導者が置かれている」(ニューズ)

ギュレン系の学校、日本にも開校   小池氏の姿も

   この組織は活動の中核を教育に置くが、ギュレン系の学校が13年に日本の横浜でも開校している。「学校法人ホライゾン学園」がそれだというのだ。

   そして16年には仙台で小学校も開校したそうだ。仙台校は日本の義務教育の卒業資格が与えられる「1条校」で、インターナショナルスクールのように教科を英語で教えることから、授業料が高額にもかかわらず大変人気が高いという。第2外国語はトルコ語。

   この学園の設立課程に違法性はないが、ギュレンの目的の一つは「学校を通して洗脳できる生徒の選抜」だそうだ。

   だが、この学園はギュレン運動とは関係を持っていないとして、こうした出自は明示していない。

   この組織は日本ではトルコの食品商社「バハール社」が営利事業を行い、歴代のトルコ大使もこの活動を支え、日本の政治家に浸透してきた。そのひとりが飯島だというのである。

   先を急ごう。この組織が宣伝活動を日本で行うのが「NPO日本トルコ文化交流会(日ト会)」で、ギュレン運動関係者の誰もが名前を挙げるのが小池だそうだ。

   同会のパンフに推薦文を寄せ、イベントにも何度も姿を現している。先の仙台校の説明会の日に、同校で教育講演会をやっている。

   トルコにある「ハタイさくら小学校」は、シリアの難民の子どもたちに教育を施そうと小池が議員連盟を作り、寄付を募って開校した。ネット募金で約2500万円が集まったという。だが、この学校はクーデター未遂後に一時閉鎖になり、小池が知事就任後には別のNGOが運営するようになった。

   ギュレン運動の実態はこれからもっと解明される必要があるが、「なかでも将来の首相候補といわれる小池については、公私にわたりさまざまな報道がなされながら、その『外国人脈』の内実についてはほとんど光が当てられてこなかったのではないだろうか」(ニューズ)

   小池がカイロ大学を優秀な成績で出たことは間違いない。その時代に培った人脈は今どうなっているのだろうか。見えている小池は彼女の半分でしかない。陰になっている後の半分を解明することも、ジャ-ナリズムの仕事であるはずだ。

週刊ポストは再び「ニホン・アズ・ナンバーワン」

   週刊ポストの巻頭は「日経平均は史上最高値へ一直線!」。再び「ニホン・アズ・ナンバーワン」の座を取り戻すという夢のような特集である。

   企業の収益率(PER)は、アメリカのマイクロソフトが約30倍、グーグルが約38倍なのに、トヨタは約14倍、ソフトバンクグループは約10倍と低く評価されている。

   為替レートは1ドル=150円で釣り合う。トランプの政策は景気をさらによくさせ、五輪を控えている日本の地価はバブル期のように上昇するそうだ。

   よくもまあ、これほど楽観的に考えられるものだ。先のニューズでは「トランプ相場ははかない幻想だ」とタイトルを打ち、こう結んでいる。

「投資家の皆さん、暴走列車から飛び降りるタイミングにはくれぐれもご注意を」

   米中関係、原油高、欧州の混乱、どれ一つをとっても日本にいい影響があるとは思えない。その答えが出るのはそう遠くはないはずだ。

週刊現代は「生活コスト下げ、老後を生き延びろ」

   週刊現代はガラッと変わって徹底的な悲観論できた。巻頭は「100年生きるのは幸せか」

   17年からは65歳から74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者の数が逆転するといわれている。病人を選別して、治る見込みのない老人は病院に来ないでくださいと、追い返されるようになる。

   これからは60代は「若者」と扱われ、社会の中心に立ってバリバリ働く世の中になる。60代ははなたれ小僧なのだ。

   それもこれも、普通のサラリーマンが定年後100歳まで生きようとしたら、総計で1億1872万円いる。これは生活費だけで、自宅のリフォームや医療、介護費、趣味などに使うとすれば、さらに2~3000万円はかかるというのである。

   平均的なサラリーマン世帯の年金収入が月額22万円だとすると、100歳までの年金収入は約9500万円だそうだから、5000万円も不足することになるそうだ。

   そうならないためにどうするか? 「生活コストを下げても幸福に暮らす工夫をすべきです。たとえば外食の回数が減っても、料理を作る喜びがあれば、不幸ではない」(政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦)

   昨夜、鍋にしようと思いスーパーへ行ったら、たった4分の1の白菜が150円もしていた。ホウレンソウ、ニラ、大根など野菜が高くて、鍋が成り立たないのだ。

   外食などもってのほか、家でつつましく鍋でも突こうと思ってもままならないのである。

   今の日本は長生きしようと思わせない社会になってしまった。せめて自分が死にたいときに死ぬことができる「安楽死」の制度を早くつくってほしいと、切に思う。

横浜点滴殺人事件で重要証言

   暗い話のついでに週刊文春の「横浜点滴殺人事件」にいこう。9月に起きた神奈川県横浜市の大口病院で起きた殺人事件だが、当初は犯人逮捕はすぐと思われたが、意外に長引いている。

   物証が乏しく、容疑者逮捕に結びつく決定打がないことが、捜査を難しくしているようであるが、週刊文春は、犯人に結びつく重要証言を入手したと報じている。

   それは事件が発生する約三週間前のことだという。

「四階病棟の夜勤は二人の看護師が担当。定期的に病室を巡回し、入院患者の検温や点滴の切り替えを行っていた。
   突然、そのうちの一人が持ち場を離れた。何かを隠すようにタオルで包み、ナースステーション近くの汚物室へ入って行く。その後、汚物室から発見されたのは、犯行に使われたのと同種類の消毒液『ヂアミトール』の空容器だった」(週刊文春)

   この人間を週刊文春はB氏だとしている。15年春頃から大口病院に勤め始めた当時20代の女性看護師のB氏は、先のような不審な行動を、同僚看護師に目撃されているというのだ。

   この女性、一時は「県警が逮捕状の請求を検討した」という情報が流れ、自宅のアパートの前は報道陣でごった返したが、その後の動きはないようだ。

   大口病院は入院病棟を16年で閉鎖、外来診療だけと発表している。

   だが、どこへも行くあてのない患者もいて、病院側の責任感のなさも指摘されているそうだ。

   こうした無責任な病院で死にたくはないとは思うが、それさえも「贅沢」だといわれる、死に場所のない老人が大量に出る時代がすぐそこに来ている。生きるも地獄、死ぬも地獄か。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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