今書店に行くと、目立つところにずらりと並ぶ奇妙な本がある。赤いベレー帽をかぶった少年が佇んでいる写真に、「見てる、知ってる、考えてる」と子供らしい筆跡のタイトル。著者の名も「中島芭旺」と手書きだ。これが10万部の大ヒットだという。筆者の中島芭旺(ばお)さんとは、なんと11歳の少年だった。小学5年生だが、今は「自宅学習」ということで通っていない。いじめにあって、「学校へは行かない」と自分で決めたのだそうだ。その時思ったこと、考えたことを書き綴ったのが9歳の時だという。おまけに、自分で出版社に売り込んだというから驚く。
いじめ受け不登校に・・・「好きなことをやる勇気」持つ
「正解のない世界で生きて行く僕達は、好きなことをやる勇気が必要だ」
こうした92の言葉が並ぶ「見てる、知ってる、考えてる」(サンマーク出版、1296円)は今年8月発売。帯に「10歳の男の子が書いた自己啓発本」「茂木健一郎氏推薦」とあり、3か月で10万部を突破した。茂木氏は「バオはこの本で、もしかしたら、大人の常識をひっくり返すかもしれない」と書いている。
いったいどんな子どもなのだろう。「スッキリ」が待ち合わせた場所に現れた少年は、赤いベレー帽に長めのコート、手にiPadを持っていた。iPadはゲームだという。「ゲームをしている時が一番楽しい」「好きなゲームは?」「ポケモンですね」
住んでいるのは東京都内。6歳上の姉がいる。
言葉はいつ浮かぶのか? 「ゲーム中にふと浮かびます」「メモとか」「メモはしない」「忘れない?」「忘れちゃうってことは、それほど面白くなかったということ」。違いない。
悩んでいた昔の自分のために書く
なぜ本を書こうと思った? 答えは、本のあとがきにあった。「悩んでいた昔の自分にプレゼントする本を書きたいと思った」。小3の時転校して、いじめを受けた。お母さんの弥生さんに「学校に行きたくない」といった。弥生さんは「よく言えたね。私が小学校の時に『行かない』という選択を選ぶことはできなかったし、それを『自分で決めて自分で言える』のはすごいなと思いました」と言った。
その時のことを本ではこう書いている。「学校に行きたくなくても行っていた頃、僕は生きていたけど死んでいた。自分の声を無視し続けて、僕は僕を殺していた」「あの頃の僕に言いたい。自分を生き返らせるんだ。僕ならできる。未来の僕は生き返ってるぞ」
今、月に一度、先生に普段の生活を報告することで、学校に通わず、自宅学習をしている。興味のあることを自分で学びに行く。本を読んで著者に会うとか、講演会、イベントに参加。出版記念握手会などどんどん出かけるのだそうだ。
出版社にも自分で交渉
そもそもの本の出版も、弥生さんのSNSから出版社に直接連絡し、受けた担当者が「本当に9歳か」と検索したらツイッターが出てきた。それからお付き合いが始まったという。今は、自分の銀行口座を持ち、弥生さんに「必要な金額を下ろしておいて」という状態だという。
出版社には300通以上もの感想が寄せられているそうだ。
近藤春菜「子どもの頃、自分が思ってることを言葉にするどころか、自分が何考えてるかすらわからなかった」
遼河はるひ「自分を客観視するなんてね。こんな言葉でてこない」
加藤浩次「悩んでるのは大人ですから。子どもは悩んでない。なんか当たり前のことのような」