健康不安や病気情報を提供する大手IT企業のDeNAが運営する医療系の「まとめサイト」が休止となった。医学的根拠に欠ける多数の記事を掲載したために炎上し、休止に追い込まれたのが原因だった。ITジャーナリストの三上洋が生出演し、このまとめサイトの内情を探ったところ、信じられない実態が浮き彫りになった。
休止になった医療系まとめサイトは、DeNAが運営する『WELQ(ウエルク)』。インターネット上にある多数の情報をジャンル別にまとめ利用者が検索しやすいようにしたサイトで、昨年10月スタートした。三上によると、DeNAが運営するこうしたまとめサイトは、医療系のWELQを含め10件にのぼり、7~9月までの3か月間で売り上げ(広告収入)が15億円あったという。
医療系のサイトの利用者は高齢者が圧倒的に多く、東京・巣鴨で30人に健康・病気に関する情報の入手先を聞いたところ、半数の15人がこうしたネット上のサイト。しかも「ネットの記事は普通に信じちゃいますね」(70代女性)が多かった。
一体どんなカラクリになっていたのか?炎上した原因を探ると、実態は呆れたものだった。広告主は人気サイトに広告を出すが、広告収入を増やすためには単に情報をまとめるだけでなく、検索しやすい文言を入れた記事を投入し検索件数を増やす必要がある。日々の更新、投入で「記事の量はあまりにも多過ぎわからない」(DeNA広報)というほど。
主婦やフリーターが小遣い稼ぎで記事を書き、専門家はノーチェック
問題は、専門的な知識がいる医療や健康に関する記事を誰が書き、どんな方法で掲載されていたのか。DeNAによると「専門家による監修のないまま医療記事を載せていた」(社長謝罪文)という。三上は「編集者も、記事の間違いをチェックする校正者もいない。発注者が、関心・需要の高いキーワードを示し執筆するよう指示していただけだった」と呆れる。
同サイトの元ライターによると、「WELQには1000人以上がライターとして登録され、医療関係者はほとんどいない主婦やフリーターが小遣い稼ぎでやっていた。1万字書いて5000円から7000円だった」という。
当然、医学的根拠のない記事が出てくる。例えば、『ものもらい』を検索すると「ヘソに温めた天然塩を詰めて絆創膏で蓋をし、1日から2日程度置いておく、体の中心であるヘソから体全体に殺菌作用が働くようです」。医師は「ヘソに炎症を起こす可能性がある。効果はまったくない」と指摘する。