番狂わせアメリカ大統領選!トランプ勝利も想定していた週刊文春・・・記事作りうまい

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株価2万円急騰の「週刊ポスト」、1万3000円に下落の「週刊現代」どっちなの?

   読売新聞10日付の1面「四季」という欄にこういう句があった。「絶滅のこと伝わらず人類忌   正木ゆう子」

   週刊誌のおもしろさは、時として主張がまったく違う論調が同じ発売号に載ることである。今週は週刊ポストと週刊現代が株価の先行きで正反対の読みをしている。

   週刊ポストは、野村證券投資情報部の滝沢俊彦部長が「年末には株価1万9000円、来年は2万円超えもある」と依然として強気の姿勢を崩していないというのだ。彼がいうには、現在の状況は株が急騰した1997年の状況に似ているという。そのときはIT革命バブルで、株価が10倍になる企業株が続出したが、今回はAI革命、人工知能革命で10倍株が続出するというのである。

   何をバカなことをと私は思う。日銀の黒田総裁でさえアベノミクスの失敗を公に認めたのに、失礼だが株屋のいうことなどそのまま聞いて株価が上がると吹聴するのは悪い冗談としか思えない。株屋は株が上がってなんぼの世界だ。下がる、買うのはやめたほうがいいなどと口が裂けてもいわない。

   今の日本に株が上がる材料などどこを探してもあるはずがない。週刊現代によれば、日銀が出したレポート「金融システムレポート別冊シリーズ」にこうあるという。<金融システムレポートは日銀の金融機構局が年に2回作成し、日本の金融システムの健全性について日銀が分析するものである。(中略)

   レポートを作成した金融機構局は、総勢300名を越す日銀マンが働く大所帯。経済危機で資金繰りに行き詰まった金融機関への緊急融資を担うことから、金融システムの安定をつかさどる『最後の砦』とも言われる。つまりは日銀の中枢の一つであり、そこが「株式暴落レポート」を出したのだから余計に衝撃が大きくなっている>

   実際にレポートを引けば、米国の金利上昇が始まると、まず<米国経済が減速する。米国経済の下振れは、貿易・金融チャンネルを通じて世界経済に波及する。その結果、わが日本の経済も減速するというのである。「はなから『世界同時不況』のリスクを指摘している。さらに、こうした世界同時不況が顕在化してくると今度は、『グローバルに企業財務を悪化させ、信用コストが増加する。この間、新興国から米国など先進国への資金流出が起こり、新興国の成長率がさらに下押しされたり、ドル建て債務を抱える新興国企業の財務悪化を招く可能性もある』(中略)

   もちろん、このような状況下では日本企業への影響も甚大なものとなり、まず『ドル調達市場において資金供給が抑制され、(中略)わが国金融機関の海外ビジネスに収益や経営体力面から大きな影響が及ぶ可能性が高い』

   ――つまり、邦銀がドルを手に入れるのに莫大なコストがかかるようになるため、海外ビジネスが立ち行かなくなると警鐘を鳴らしている。

   続けて、『流動性が低い海外貸出については、これをファイナンスする外貨が確保できなければ、損失覚悟の売却(投げ売り)を余儀なくされるため、金融機関への影響も相応に大きくなると考えられる』と、金融危機リスクにまで言及しているのである>

   この日銀レポートが恐ろしいのは、こうした金融パニックが起きた時、日本ではGDPや株価がどうなるのかまで具体的に試算しているところにあると週刊現代はいう。

   <国内経済(実質GDP)の成長率も、2015年度0・8%から2017年度マイナス0・2%へと低下する。この間、わが国の株価は、ドルの長期金利上昇の影響を踏まえ、2割弱下落すると想定する』

   日本経済はマイナス成長に転落し、1万7000円台の株価が一気に1万3000円台まで暴落するというのだから、ただ事ではない>

   トランプリスクで株が乱高下している。実際にトランプ政権が動き出せば、国内の景気浮揚、雇用確保のために、日本に厳しい政策が出てくる可能性は高い。株がどうのというより、日本経済が沈没しないためにどういう手が打てるのか、考えるときは今しかない。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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