「シューカツエイガ」「SNSって怖いよね」「いるいる、ああいうヤツ」で片づけるにはもったいない。佐藤健演じる拓人とそのルームメイトの光太郎(菅田将暉)は就活を控えた大学生で、たまたま同じマンションにクラスメイトの瑞月(有村架純)の友人・里香(二階堂ふみ)が住んでいることを知り、協力して就活に挑もうと意気投合する。
同じだと思っていた仲間の中でも、受かるヤツ、落ちるヤツがいる。わかったような物言いをする奴、いけ好かない奴が転ぶのを見ると、どこかでほっとする。実力が伝わらなかったと自分に言い聞かせても、心の奥ではそんな風には割り切れない。
テストの点やかけっこのタイムのように、基準が明確じゃないから、受かれば人格のすべてを肯定されたような気持ちになり、落ちればその逆の気持ちになる。混乱し、「お祈り」される度に摩耗する心。それでも、一度走り出したら止まることは許されず、大きな波にもまれながら、自分に問う。俺は何者なのか。
主役級の人気俳優並べたなかなかの見応え
全員が主役級の人気若手俳優が、誰一人浮くことなくぴたりとはまっているのが心地よい。佐藤健がしっかりあか抜けてない大学生に見える。有村架純が4年間でぐっと可愛くなる、芋っぽかったクラスメートっぷりに見える。
そして、何と言っても、菅田将暉には「ずるい!」の一言。お調子者だけど、何かに打ち込むときは超真剣。とにかく明るいのけれど、空気が読めない訳じゃない。平気で人に頭を下げられて、格好悪いところも、飛び上がるくらい嬉しがっているところも、さらりと見せることができる。でもって、ちゃらちゃらした見た目に似合わず、ちゃんと芯のある女の子を選んで大事にできる度量がある。影のある役がはまるイメージだったけれど、陽の菅田将暉もいいじゃん!
一方で、佐藤健は人から嗤われることに敏感になりすぎて、格好悪く自分をさらけ出すことができない。クリエイター面した学生、ほとんど集客力のない素人劇団の座長など、多くの「すごい自分を演出したがっている」奴らを憎み、「イタい」と断じる。ただ、その「イタさ」へのアレルギーは一種の同族嫌悪にも見える。
合否のたびに入り混じる高揚と落胆と嫉妬
高揚と不安が入り混じった疾走感の強いテーマ曲、合間合間に挟まれるダンスシーンがしっかりと決まり、場面場面は大学構内や企業内という日常の延長ながら、シュウカツのもつ「非日常感」が全体を通してたたみかけてくる。
「食うために働く」「自己実現のために働く」「世界の貧困のために働く」。動機はひとそれぞれで、そこに貴賤や優劣はない。わかっていても、合否がつくたびに自分とは違う価値観を異物として攻撃してしまいたくなる。
多くの大学生は、シュウカツを通して高校生のころの「何にでもなれた自分」から、「何かになりたくて、それすらわからない自分」に向き合うことになる。「桐島、部活やめるってよ」の頃、無敵だった私たちは、自分の脆さを認めた分だけもう一度強くなる。原作に忠実な良作でした。
おススメ度☆☆☆☆