このところ、野菜の高騰は頻繁に話題になるが、魚までは気が付かなかった。しかも、漁獲高には左右されない養殖魚が高くなっているというから裏に何かありそうだ。
まずは現場を見てみよう。都内のあるスーパーではノルウェー産アトランティックサーモンは100グラム293円で5年前より96円高。この傾向はサーモンだけに限らず、タイも16円高で581円、エビは89円高で325円、ブリも20円高で260円、マグロも11円高で403円となっている。
世界の人たちが魚をどんどん食べるように
久保田祐佳キャスターが示した「世界の水産物の価格」というグラフによると、2004年当時、1トン当たり1300ドル程度だった養殖魚の値段がどんどん上がり続け、2014年には2200ドルにまで高騰している。
これには、この日のゲストで東京海洋大学客員准教授のさかなクンも首をかしげる。
「天然モノのサンマやイワシが不漁で一時的に値段が高くなることはありますが、天然モノよりも価格が安定しているというイメージのある養殖モノも、値段が上がり続けているわけでギョざいますね~」
今、世界で何が起きているのか。もう一人のゲスト、有路昌彦・近畿大学世界経済研究所教授が解説する。
「世界の人たちが魚をどんどん食べるようになっているんです。いわゆる『爆食い』です。当然、需要に対して供給が追い付かなければ値段は上がりますよね。だから養殖を増やします。これが『爆養殖』。すると養殖のエサの主原料であります魚粉にも『爆魚粉買い』が起きる。そうなってくると、日本の養殖業者のエサも原価が上がってしまうということになるんです」
ここで久保田キャスターが別のグラフを取り出した。日本における肉と魚の1人当たり年間消費量を示したものだ。これによると、2004年当時は肉より魚の方が上回っていた。ところが、2011年頃に逆転現象が起こり、以来ずっと魚より肉の方が上回っている。一見、「爆食い」は起きてないようにも見えるが?
日本人の所得が減ってきた結果として、魚の代わりに肉を
有路教授「このグラフの重要なポイントは肉に比べて魚の値段が相対的に高くて、しかも、日本人の所得が減ってきた結果としてだんだん代わりに肉を食べるようになったということなんです」
と言いつつ、有路教授は別の資料を取り出した。「食材ランキング」なるもので、上から「牛」「豚」「鳥」「魚」の絵が並んでいる。
「これは各食材の値段のランキングでして、昔、我々の子供時代っていうのは、お魚は一般食というか安いごはんのおかずというイメージがありましたよね。ただ、この状況が経済上昇するごとに変わっていきまして、今や『魚』は『牛』よりも上に来てしまっているんです。しかし、庶民の暮らしを見れば貧しくなって来ているので、『魚』には手が出ず『豚』や『鳥』を多く食べるようになったということです。これに対して世界はまったく逆でして、どんどん所得が増えていったので、『(高級食材である)お魚を一番食べたいなぁ』となっているのです」
この養殖魚の価格高騰にどう取り組めばいいのか。生産現場ではさまざまな取り組みが行われている。和歌山県のあるベンチャー企業はエサに目を付けた。魚粉の価格に左右されないよう、鳥や豚、大豆、海苔なども入れてみた。すると牛肉のような旨みが生まれ、魚臭さも消えたという。
また、ある大手回転寿司チェーンでは、これまで店に出ることのなかった「シイラ」や「ボラ」などをメニューに乗せてみた。客の評判も上々で「意外にしつこくなくて淡泊でした」「おいしかったので『ボラ』ってどんな魚か調べてみようと思いました」という声が相次いでいる。
スタジオのさかなクンの前には見慣れない魚がドーンと並んでいる。
「ウツボ、ホシエイ、小さめのマサバちゃんなどですが、こうしたお魚は市場に出しても大きさがマチマチだったりして、ほとんど値段がつかないんです。だけど、食べるととってもおいしいんです。こういったお魚をもっともっと流通に乗せて、おいしくいただくと食卓もにぎやかになると思います」(さかなクン)
久保田キャスター「これまで捨ててしまっていたものを、もう一度見直そうということですね」
ビレッジマン